お葬式コラム

曹洞宗のお葬式。特徴や作法について。

日本のお葬式のほとんどは仏式で執り行われますが、すべてが同じ形式とは限りません。日本の仏教には宗派があり、大きく十三宗にわけられるといわれています。そのなかのひとつが「曹洞宗」。禅宗系の宗派で、お葬式の意味や作法にもほかの宗派とは異なる特徴があります。
今回のコラムでは曹洞宗のお葬式を特集。お葬式の意味や流れなど営む人に役立つ情報から、参列するときの作法など、さまざまな角度からご説明します。

曹洞宗とは、どのような宗派?

「曹洞宗(そうとうしゅう)」は、禅宗の一派。ご本尊はお釈迦さま(釈迦如来)ですが、今から800年以上前の鎌倉時代に中国から正伝の仏法を日本へ伝えた「道元禅師(どうげんぜんじ)」と、その教えを全国に広めた「瑩山禅師(けいざんぜんじ)」を両祖とし、お釈迦さまとともに「一仏両祖(いちぶつりょうそ)」として仰いでいます。
曹洞宗が拠り所としている正伝の仏法は、〈坐禅の仏法〉とも呼ばれています。坐禅の修行によって悟りを開いたお釈迦さまにならい、坐禅をする姿を〈仏の姿〉だとしているのです。そのため、何か目的をもって坐禅をするのではなく、ただひたすら座る「只管打坐(しかんたざ)」をすることで悟りの姿に近づきます。また、道元禅師は食べる、寝るなど生活行為にも坐禅と同じ価値があるとし、暮らしなかの行いも坐禅のように務めることが大切だと説いています。
さらに、道元禅師は、人は生を受けたときから〈仏心(ぶっしん)〉が与えられ、自分だけでなく他の人やモノの命を大切にする思いやる心が息づいているといいます。しかしながら、人は生きていくなかでその尊い心を忘れてしまい、欲深くなったり、悩みや不安を抱えてしまったりするもの。曹洞宗ではただひたすら坐って修行することで仏心を自覚し、身・息・心の調和のとれた仏の姿をめざします。さらには、日々の行いを坐禅のように大切にすることからも自身のなかにある仏の姿を明らかにし、この世に生きる喜びを見出していくのです。

曹洞宗においてのお葬式の特徴。

禅宗の一派である曹洞宗のお葬式は、〈死後にお釈迦さまの弟子になる〉ために行います。そのため、故人がお釈迦さまの弟子になるために必要な戒名や戒法を授かる「授戒(じゅかい)」と、悟りを開く仏の道へと導く「引導(いんどう)」に重点をおかれます。基本的に葬儀は2部構成で行われ、前半に行う授戒で仏の弟子となり、後半の引導で故人を仏の世界へ導くのです。
曹洞宗のお葬式は、ほかの宗派と比べてにぎやかに映ります。その理由は、「鼓鈸三通(くはつさんつう)」という儀式があるから。儀式では、太鼓のような「鼓(く)」、シンバルのような「鐃鈸(にょうはち)」、手持ち式の鈴である「引鏧(いんきん)」という鳴り物の仏具を3人の僧侶がもち、チン・ドン・シャンと音を鳴らして亡くなった人が仏の世界へ旅立つことを盛大に表現。その音色は大切な人を亡くした参列者の心身をも包み、癒やすといわれています。
このようにさまざまな儀式がある曹洞宗のお葬式は、ほかの宗派より式の時間が長くなる傾向にあります。仏具を鳴らす僧侶なども必要でお招きする僧侶の人数も多くなることから、お布施が高くなってしまうケースもあるようです。

曹洞宗の枕経「臨終諷経」

「枕経(まくらきょう)」とは、人が亡くなったときに最初に受ける読経のこと。ご遺体を安置している場所に僧侶を招き、枕経をあげてもらうのが一般的です。 枕経は仏教の儀式ですが、宗派によって呼び方が変わります。曹洞宗では「臨終諷経(りんじゅうふぎん)」といい、字のとおり臨終のときの読経です。経典としては、お釈迦さまのご遺骨(舎利)に感謝して敬う気持ちを述べる「舎利礼文(しゃりらいもん)」とお釈迦さま最後の説法である「遺教経(ゆいきょうぎょう)」が読まれます。
臨終諷経はご遺体の安置時か通夜式の前のタイミングで行われ、僧侶のほか、ご家族など故人と親しい人だけが参列することが多いようです。

曹洞宗のお葬式の流れ。

お釈迦さまの弟子になることを目的とする曹洞宗のお葬式はほかの宗派より儀式が多く、所要時間も長くなります。こちらでは、一般的なお葬式の流れをご紹介しましょう。

導師の入場

葬儀を取り仕切る僧侶である導師と、そのほかを担当する僧侶・式衆が入場します。参列者はこれより前に会場に入り、僧侶たちを迎えます。

剃髪(ていはつ)

故人をお釈迦さまの弟子(仏弟子)にするための儀式で、導師が故人の髪を剃ります。実際に髪を剃るわけではなく、剃る所作を行うだけです。儀式を行っている間は、「剃髪の偈」と呼ばれる偈文を3回唱え、祭壇では香を焚きます。 この剃髪は、授戒への事始めとされています。

授戒

仏弟子になるための戒を授かる授戒では、5つの儀式を執り行います。
・洒水(しゃすい):清めた水を供えて故人を清めます。
・懺悔文(さんげもん):故人の生前の罪を悔い改めます。
・三帰戒文(さんきかいもん):お釈迦さまの教えを守り、修行者に帰依することを誓います。
・「三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)」「十重禁戒(じゅうじゅうきんかい」:導師が法性水を用意し、位牌や自らの頭に注いで清めます。
・血脈授与(けちみゃくじょうじゅ):お釈迦さまから故人までつづく法の系図である「血脈」を授かり、祭壇に供えます。

入棺諷経(にゅうかんふぎん)

ご遺体をお棺に納める入館の儀式。しかし、ほとんどの場合はお葬式までに納棺を終えています。ここでは「大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)」という回向文(えこうぶん)を僧侶が読経している間に、参列者が焼香するのが一般的。読経と焼香後は、〈入棺諷経〉と唱えて終了します。

龕前念誦(がんぜんねんじゅ)

本来はお棺を閉じる儀式なのですが、現代では事前に行っている納棺のときにふたを閉めています。ここでは入棺諷経と同様に僧侶による読経を行います。

挙龕念誦(こがんねんじゅ)

邪気を払うために、僧侶が「大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)」を唱えます。読経中は、鳴り物の仏具を鳴らす鼓鈸三通という儀式を行います。

引導法語(いんどうほうごう)

導師が故人の人生を漢詩で表現した法語を唱え、仏の世界に導く儀式。引導法語では、導師はたいまつを模したものを灯し、時計回り→反時計回りの順番で円を描きながら漢詩を唱えます。このようにして故人に法話をおくり、邪気を払って迷わずに仏道へと進めるよう導くのです。

山頭念誦(さんとうねんじゅ)

故人の仏としての性質が覚醒されることを祈願する儀式です。これまでに行ったさまざまな儀式でお釈迦さまの弟子として迎えられた故人が無事に仏さまになれるよう、読経をして祈ります。

導師の退場

山頭念誦を終えると、導師や式衆といった僧侶が退場します。

出棺

お棺を車に運び入れて出棺します。このとき回向文を唱えて鳴り物を鳴らす鼓鈸三通を再び行い、故人をにぎやかに送りだします。また、出棺のタイミングで喪主のあいさつや参列者との最後のお別れをする場合も多いようです。

火葬

火葬場でご遺体を火葬。火葬炉の前で、参列している人が最後のお別れをすることもあります。火葬を終えると、拾骨をします。

初七日法要

亡くなった日から7日目に行う法要を「初七日法要」といいます。仏教で初七日は〈故人が三途の川に到着する日〉だといわれており、故人への供養(追善供養)をして無事に渡れるよう祈るのです。曹洞宗でも初七日法要は大切な儀式とされ、執り行います。
初七日法要は逝去日を含めて7日目に行うのが本来ですが、近年は火葬後に行う〈繰り上げ初七日法要〉が増えています。

曹洞宗のお葬式。参列者の作法や注意点。

なじみのない宗教・宗派のお葬式に参列するとき、多くの方は作法などに不安をもつのではないでしょうか。ご縁のあった方のお葬式に落ち着いて参列できるよう、曹洞宗のお葬式の参列マナーをいくつかご紹介します。

服装は一般的なお葬式と同じ

曹洞宗は禅宗の一派。ほかの宗派と考え方が異なるため、お葬式の服装に悩まれるかもしれません。しかし、喪主や親族をはじめ友人・知人も、一般的な仏式のお葬式と同じだと考えて問題ありません。
仏式の服装では、喪主や故人から見て三等親までの親族は正式喪服を着用するのが基本マナー。しかし近年は柔軟に考えられており、ブラックスーツなどの略式喪服も増えています。
親族でない一般参列者は、男性は黒などのダークカラーのスーツ、女性は黒のフォーマルスーツやワンピースを選ぶといいでしょう。急に駆けつける通夜式であれば、地味な平服でも問題ないとされています。

一般参列者であれば数珠は略式でOK

曹洞宗の正式な数珠は、「看経念珠(かんきんねんじゅ)」という108の玉が連なったもの。「百八環金」という銀の輪が入っているのが特徴です。檀家や信徒はこの本式数珠をもつのが作法ですが、一般の参列者はどの宗派にでも使える略式数珠で問題ないとされています。
●合掌時の数珠の作法
1. 左手の親指と人差し指の間に、房が下に垂れるようにして数珠をかけます。本式数珠の場合は二重にして使いましょう。
2. 数珠をもたない右手を左手に添えるように合わせます。
3. 合わせた手は胸につけるのではなく、少し離して中指の先が鼻の高さにくるようにします。頭を軽く前方に傾け、目を閉じて合掌します。

お焼香は2回が原則

お焼香の作法も宗派によって違います。曹洞宗は回数に決まりはないといわれていますが、2回の焼香が原則。〈初香は拈じ、従香は拈ぜず〉とされていることから、一回目の焼香は額におしいだき、二回目はおしいだかずに香炉に放ちます。そのことから、〈曹洞宗の焼香は1回〉と考える向きもあるようです。また、立てる線香は1本が基本です。
●焼香の作法
1. 順番がきたら焼香台へ進み、ご家族と参列者に一礼します。
2. 焼香台の少し手前で立ち止まり、ご本尊やご位牌に一礼。
3. 焼香台の前まで進み、右手の親指・中指・人差し指でお香をつまみます。
4. お香をもった右手に左手を添えて額におしいだき、念じて香炉にくべます。
5. 再び右手の三本指でお香をつまみ、そのまま香炉にくべます。
6. 数珠を左手にかけて右手を軽く合わせ、合掌。
7. 顔を遺影に向けたまま後ろに少し下がり、ご家族と参列者に一礼。席に戻ります。

お香典の表書きは「御仏前」または「御香典」

曹洞宗のお香典は、基本的にほかの宗派と大きく変わりません。不祝儀袋は黒白または双銀の水引がついた市販のものを使用し、表書きは「御仏前」または「御香典」が一般的。ほかの宗派では、お葬式では「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」と書く場合が多いのですが、死後すぐに仏弟子となる曹洞宗では〈霊〉という概念がないとされています。
そのため、「御霊前」はあまり使われないようです。書き入れには薄墨の筆ペンを使用し、水引の下のスペースには差出人をフルネームで記しましょう。 香典の相場も一般的なお葬式とそう変わらないようです。会社関係や友人・知人は3,000円〜10,000円、親族は10,000円〜30,000円、血のつながりの濃いご家族であれば50,000円〜100,000円が相場だといわれています。
また、お札は新札を使用せず、「4」「9」などの枚数もマナー違反とされる傾向があるので注意しましょう。
香典の相場やマナーは、故人との関係や地域の風習によっても変化します。迷ったときは周囲の人に相談してみるといいでしょう。相談する人がいない場合は、地域の葬儀社に問い合わせてみるのも一案です。

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