お葬式コラム

浄土真宗のお葬式。作法に違いはあるの?

日本のお葬式は約9割が仏教の形式で行われます。しかし、仏教には宗派があり、それぞれに特徴があります。弔事でもそれは踏襲され、お葬式の営み方や作法にも宗派ごとの違いが見られます。
今回は日本の仏教において最多の信仰者(門徒)をもつといわれる「浄土真宗」を特集。宗派の教えなどの基本からお葬式の意味や流れ、さらには参列者のマナーなど多様な情報をお届けします。

浄土真宗とは。どのような教えがあるの?

「浄土真宗(じょうどしんしゅう)」は、法然上人(ほうねんしょうにん)を開祖とする「浄土宗」の分派で、法然の弟子である親鸞聖人(しんらんしょうにん)が鎌倉時代の初期に開きました。浄土宗と浄土真宗はどちらも極楽浄土で衆生(すべての生物)を救う仏である「阿弥陀仏」を本尊とし、「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と念仏を唱えて極楽浄土への往生を祈るところも同じです。むろん違いもあり、親鸞は浄土宗の教えをさらに発展させたともいわれています。
例えば、浄土宗は〈念仏を唱えることで誰もが極楽浄土に行ける〉と説いていますが、浄土真宗は〈阿弥陀仏の救いを信じるだけで往生できる〉。つまり、念仏はとても大切だけど、仏を信じる心をもつだけでも救われるという教えなのです。
また、浄土真宗で興味深いのが、〈悪人こそ往生できる〉と考えられていること。親鸞の言葉をまとめた『歎異抄(たんにしょう)』に〈善人なおもて往生す、いわんや悪人をや〉という有名な文があります。これを現代風に意訳すると〈善人でさえ救われるのだから、悪人はなおさら救われる〉となります。現代の感覚では不思議に感じますが、阿弥陀仏にとってはすべての人間が悪人。人は人生のなかで善行ばかりするわけではなく、悪いこともしてしまいます。それを自覚している人は自覚せずに自分を善人だと思っている人より熱心に信仰するため、“より救われる”といっているのです。このことからも、性別や年齢、おかれた状況に関係なく、すべての人が信仰によって救われると考えられている浄土真宗の教えがわかります。

浄土真宗のなかの宗派

浄土真宗には、真宗十派といわれる10の宗派があります。そのなかでも大きいのが東本願寺を本山とする「真宗大谷派」と西本願寺を本山とする「本願寺派」。どちらの本山も京都駅近くにあり、地元の人は親しみをこめて「お東さん(東本願寺)」、「お西さん(西本願寺)」と呼びます。
本願寺が東西にわかれた背景には、織田信長の存在があります。戦国時代、今の大阪城の場所に建っていた浄土真宗(一向宗)の一大拠点・石山本願寺を織田信長が攻めます。「石山戦争」とも呼ばれるこの争いは10年以上つづき、信長は朝廷を介して和睦を要求します。そのとき、当時のトップであった顕如(けんにょ)と長男の教如(きょうにょ)で意見が異なり、本願寺内が2派に割れてしまったのです。顕如が和睦に応じて石山本願寺を明け渡すことで戦争は落ち着きますが、対立した親子の溝は深くそうやすやすとは埋まりません。その後も歴史に翻弄されるなか、本願寺は東西にわかれてしまうのです。
宗派が違うといっても同じ浄土真宗なので基本的な教えは似ています。とはいえ、異なる部分はあり、弔事にも違いが見られるので、それぞれの宗派にあった作法で執り行うといいでしょう。

浄土真宗においてのお葬式の特徴。

浄土真宗では、「往生即成仏(おうじょうそくしんぶつ)」が信じられています。往生は、〈往き生まれる〉という意味で、信心をもつ者は阿弥陀仏のチカラによって浄土へ往き生まれ、仏となるのです。
そもそも、浄土真宗は「他力本願」を大切にしている宗教です。この他力本願は〈他人まかせ〉といった意味ではなく、阿弥陀仏の衆生を救おうとしているチカラ(本願力)を拠りどころとして生きること。阿弥陀仏を信じて生きていれば、自ら修行する(自力)の段階を踏まなくても、阿弥陀仏の本願力によって現世で亡くなったあとに即成仏できるとされています。
そのため、浄土真宗のお葬式は〈死者の供養のために行われるもの〉ではありません。阿弥陀仏に感謝し、故人の往生を託すための場。ほかの宗派では行う儀式がなかったり、独自のしきたりがあったりします。

「告別式」という考えはない

ほかの宗派のお葬式では、「葬儀式」と「告別式」を行うのが通常。しかし、浄土真宗では告別式という考えはありません。
告別式というのは〈別れを告げる式〉。友人や知人などが故人とお別れをする儀式なのです。しかし、誰もが浄土に行けるとされている浄土真宗では、〈死=二度と会えない〉とはなりません。阿弥陀仏によって浄土に往き生まれるため、現世で別れても〈いつかは浄土で再会する〉のです。そのような考えをもとに、浄土真宗では「告別式」という言葉を使わないのです。

そのほか、浄土真宗で行わないこと

故人の供養をしない浄土真宗のお葬式では、ほかの宗派では行っていることが、いくつか存在しません。
●末期の水:浄土真宗はすぐに浄土へ行けるので、死後の旅路でのどが渇かないように願う儀式である末期の水は不要と考えられています。
●死装束:故人はすぐに浄土へ行けるため、死出の旅をする衣装・死装束を身に着けません。
●戒名・授戒:死後に仏弟子になる概念がないため、戒名や授戒はありません。戒名ではなく、仏法に帰依したことを表す「法名」をもらいます。
●お清めの塩:誰もが仏になる浄土真宗では死を穢れとしません。通夜式や葬儀式では参列者に配らないのが通常です。

浄土真宗本願寺派のお葬式の流れ。

浄土真宗は、そのなかでいくつかの宗派にわかれ、お葬式もそれぞれ異なります。こちらでは代表的な宗派のひとつ「本願寺派」の流れをご紹介。大きな流れとしては、ほかの宗派のお葬式と同様に〈通夜→葬儀→火葬〉を2日間で行うのが一般的です。

臨終勤行

ほかの宗派では「枕経」と呼ばれる儀式。永年、見守っていただいた阿弥陀仏への感謝として行う勤行で、ご遺体を安置している場所に僧侶を招き、近親者が参列して営むことが多いようです。また、ご遺体を自宅に安置していて、なおかつご自宅に仏壇がある場合は、ご仏壇の前で僧侶が読経します。

通夜勤行

いわゆる通夜式で、葬儀の前夜、ご家族や友人・知人など故人と縁のあった方が集まって勤行します。決められた流れはありませんが、僧侶による読経、参列者の焼香などを行うのが通常。僧侶による読経は仏壇・祭壇に向かってするのが基本で、本願寺派は「阿弥陀経」を読むのが一般的です。
法名をいただいていない場合は、このとき授けてもらうこともあります。

出棺勤行

お棺をご自宅から葬儀会場へ送りだすときの勤行。近年はご遺体を自宅に安置しないケースが増えているため、次の葬場勤行とあわせて会場で行う場合がほとんどのようです。
勤行では「帰三宝偈(きさんぽうげ)」や節回しが独特な「路念仏(じねんぶつ)」を唱え、お棺が葬儀会場に移されたことを表します。

葬場勤行

一般的に「葬儀式」と呼ばれる儀式で、多くのことが執り行われます。流れとしては、はじめに「三奉請(さんぶじょう)」を唱えて阿弥陀仏などあらゆる仏さまをお招きし、僧侶による焼香や法要の趣旨を述べる「表白(ひょうびゃく)」、「正信偈(しょうしんげ)」などの読経に進みます。ご家族から一般参列者の焼香も行われます。
功徳をすべての人に回し向けるための念仏「回向(えこう)」を唱え終えると僧侶が退場して閉式。喪主があいさつし、出棺します。

火屋勤行

火葬場でご遺体を火葬する前に行うお勤め。僧侶の読経、参列者の焼香などののち、ご遺体を火葬します。火葬後は拾骨し、お骨を骨壺に納めます。

還骨勤行

ご遺骨がご自宅や斎場などに戻るときに営む儀式。お骨になった故人を後飾りの祭壇などにお迎えします。還骨勤行は単独で行うだけでなく、繰り上げた初七日法要とあわせて行う場合もあります。

初七日法要

「初七日法要」は亡くなった日を1日目と数えて7日目に行うものですが、近年は火葬後に行う〈繰り上げ初七日法要〉が増加。浄土真宗のお葬式でも、葬儀式の当日に営むケースが多くなっています。
ほかの宗派では故人の追善供養のために法要を営みますが、浄土真宗では死者は即成仏しています。そのため、阿弥陀仏への信仰心のもとで故人に感謝を伝え、偲ぶことを目的としています。

真宗大谷派のお葬式の流れ。

「大谷派」も死者は往生即成仏という教えのため、本願寺派と似たような流れでお葬式を行います。大きく異なるのは「葬儀式第一」「葬儀式第二」があること。さらに、葬儀式第一のなかも二部構成になっており、執り行う内容は本願寺派より多くなっています。

臨終勤行

ほかの宗派では「枕経」と呼ばれる儀式。永年、見守っていただいた阿弥陀仏への感謝として行う勤行で、ご遺体を安置している場所に僧侶を招き、近親者が参列して営むことが多いようです。また、ご遺体を自宅に安置していて、なおかつご自宅に仏壇がある場合は、ご仏壇の前で僧侶が読経します。

通夜勤行

いわゆる通夜式で、葬儀の前夜、ご家族や友人・知人など故人と縁のあった方が集まって勤行します。決められた流れはありませんが、僧侶による読経、参列者の焼香などが行われるのが通常。僧侶による読経は仏壇・祭壇に向かってするのが基本で、大谷派では「正信偈」を読みます。また、最後に僧侶からの法話があることも多いようです。 法名をいただいていない場合は、このとき授けてもらうこともあります。

葬儀式第一:棺前勤行

仏壇の本尊に故人がお世話になったお礼とあいさつをするため、本来はご自宅の仏間で営む法要。近年はご遺体を自宅に安置しないケースが増えているため、次の葬場勤行とあわせて会場で行う場合がほとんどのようです。
式は全員で合掌して念仏を唱える「総礼(そうらい)」にはじまり、僧侶が席についたことを知らせる「伽陀(かだ)」、お鈴を鳴らす「三匝鈴(さそうれい)」とともに独特な節まわしの「路念仏」を唱えます。棺前勤行を終えると、葬場勤行へとつづきます。

葬儀式第一:葬場勤行

「三匝鈴」を鳴らして「路念仏」を唱え、僧侶による焼香や法要の趣旨を述べる「表白」などが行われ、「正信偈」の読経に進みます。その間に弔事の読み上げが入ることも多いようです。
仏さまとその教えを讃える「和讃」や「回向」を唱え、再び「総礼」をして葬儀式第一を閉式します。

葬儀式第二

葬儀式第二は、第一と違って一部構成。「総礼」をはじまりに「伽陀」で僧侶の着席を告げ、衆生に仏道を勧める偈文「勧衆偈(かんしゅうげ)」の読経、念仏を10回唱える「短念仏十遍」など多くのことを営みます。葬場勤行と同様に僧侶の焼香を行いますが、こちらではご家族や一般参列者も焼香します。
「和讃」や「回向」ののち、「総礼」で締めくくって僧侶が退場。閉式をして喪主があいさつし、出棺します。

火屋勤行

火葬場でご遺体を火葬する前に行うお勤め。僧侶の読経、参列者の焼香などののち、ご遺体を火葬します。火葬後は拾骨し、お骨を骨壺に納めます。

還骨勤行

ご遺骨がご自宅や斎場などに戻るときに営む儀式。お骨になった故人を後飾りの祭壇などにお迎えします。還骨勤行は単独で行うだけでなく、繰り上げた初七日法要とあわせて行う場合もあります。

初七日法要

「初七日法要」は亡くなった日を1日目と数えて7日目に行うものですが、近年は火葬後に行う〈繰り上げ初七日法要〉が増加。真宗大谷派のお葬式でも、葬儀式の当日に営むケースが多くなっています。
ほかの宗派では故人の追善供養のために法要を営みますが、真宗大谷派では死者は即成仏しています。そのため、阿弥陀仏への信仰心のもとで故人に感謝を伝え、偲ぶことを目的としています。

浄土真宗のお葬式。参列者のマナーや注意したいところ。

浄土真宗では、参列時に気をつけたいマナーがいくつかあります。また、本願寺派と大谷派で作法が異なる場合もあるので確認しておくと安心です。

数珠の持ち方

浄土真宗には数珠の決まりごとはありません。ご自身の好みや寺院がすすめるものを購入するといいでしょう。男性は一重タイプ(片手念珠)の紐房、女性は108玉で頭付房がついている数珠が一般的なようです。
ただし、持ち方は各派で違いがあります。
●本願寺派の数珠の作法
男性の持ち方:合わせた手の親指と人差し指の間に数珠を挟み、房を手の真下に垂らします。
女性の持ち方:数珠を二重にし、合わせた手の親指と人差し指の間に挟んで房を手の真下に垂らします。
●大谷派の数珠の作法
男性の持ち方:合わせた手の親指と人差し指の間に数珠を挟み、房を手の真下に垂らします。
女性の持ち方:二重にした数珠の親玉を上にして合わせた手の親指と人差し指の間に挟み、房を左側にたらします。
こちらの宗派でも、手にするときは房を下に垂らすようにしてもちます。

お焼香は宗派で違う

浄土真宗のお焼香は、お香を押しいただかず(額に近づけず)、つまんだまま香炉へ焚きます。ただし、回数は本願寺派と大谷派で異なり、本願寺派は〈1回〉、大谷派は〈2回〉です。
●焼香の作法
1. 順番がきたら焼香台へ進み、ご家族と参列者に一礼します。
2. 焼香台の少し手前で立ち止まり、ご本尊に一礼。
3. 焼香台の前まで進み、右手の親指・中指・人差し指でお香をつまみます。
4.お香を押しいただかず、そのまま香炉にくべます。(本願寺派:1回、大谷派:2回)
5. 数珠を手にかけて合掌。
6. 顔を遺影に向けたまま後ろに少し下がり、ご家族と参列者に一礼。席に戻ります。

お香典の表書きは「御仏前」

浄土真宗の不祝儀袋はほかの宗派とかわりなく、黒白水引がついた市販のものを使用して問題ありません。地域によっては双銀や黄白の水引がついた香典袋を使用する場合もあります。
注意が必要なのが、表書き。「御仏前」が一般的で、「御香典」と書いてもかまいません。浄土真宗において死者はすぐに仏になると考えられており、「霊」という概念がありません。よく使用される「御霊前」は使用しないようにしましょう。「御仏前」は本願寺派と大谷派のどちらにも対応しています。
表書きの記入は薄墨の筆ペンを使用し、水引の下のスペースには差出人の名前をフルネームで書き入れます。
お香典の金額は、一般的なお葬式に合わせて問題ありません。会社関係や友人・知人は3,000円〜10,000円、親族は10,000円〜30,000円、血のつながりの濃いご家族であれば50,000円〜100,000円が相場だといわれています。
とはいえ、香典の相場やマナーは故人との関係や地域の風習で異なります。まずは周囲の人に相談してみるといいでしょう。

お悔やみの言葉には注意が必要

往生即成仏で亡くなるとすぐに浄土へ往生するという教えの浄土真宗では、死者が行く世界とされる「冥土」という概念がなく、〈冥土に旅立つ〉ということもありません。 そのため、お悔やみの言葉としてよく使われる「ご冥福をお祈りします」はふさわしくないのです。また、死者は浄土へ往って生きるので、「安らかにお眠りください」も使わないほうがいいでしょう。
ご家族へのおくやみは、「この度はご愁傷さまです。心よりお悔やみ申し上げます」というように、〈冥福〉を使わない言葉を選びましょう。もちろん、弔電での使用もNGです。

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