お葬式コラム

日蓮宗お葬式。作法やマナーを教えて!

日本の仏教はいくつもの宗派にわかれています。そのひとつが「日蓮宗」。信仰する人が多い宗派なので、日蓮宗のお葬式を執り行ったり、参列したりする機会もあるのではないでしょうか。
ほかの宗派と同様に、日蓮宗にも教えにそった独自の作法が存在します。お葬式という厳粛な場でマナー違反を犯さないよう、知っておいてほしい日蓮宗のお葬式の特徴や流れ、参列時の注意点などをくわしくご紹介します。

日蓮宗とは。どのような宗派なの?

「日蓮宗(にちれんしゅう)」は、鎌倉時代に日蓮聖人(にちれんしょうにん)によって開かれた宗派。開祖の名前が、そのまま宗派の名になっています。 現在の千葉県に生まれた日蓮は十二歳のときに近くのお寺にあずけられ、十六歳のときに出家得度します。当時は自然災害や抗争で多くの民衆が貧しく、困難を極めた時代。日蓮はすべての人が救われる仏法を求めて鎌倉や比叡山、高野山などの名刹で学びます。そして、〈妙法蓮華経(法華経)こそが真の経典である〉と悟り、法華経信仰を広めていくのです。
日蓮が拠りどころにした「法華経」はお釈迦さまが晩年に説かれた経典(お経)で、〈生きとし生けるものすべてに仏心があり、仏を信じることで、どんな人でも仏から手を差し伸べてもらえる〉と教えています。困難な時代にあらゆる人を救いたいと願った日蓮が、仏教の真髄だと結論づけたのもうなずけます。
日蓮宗のお題目は「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」。〈南無〉は一心に仏を信じることを意味し、〈妙法蓮華経〉にはお釈迦さまが多くの人を導いた功徳のすべてが備わっているといわれています。この題目を唱えるとこで、自分のなかにある仏心を呼び表せると信じられています。 また、日蓮宗では〈今を生きること〉を大切にしています。日蓮宗でも死後の世界は存在し、亡くなった人はそこへ旅立ちますますが、来世での幸せより、現在の暮らしに重きをおく教え。所依経典である法華経には、〈今をいきいきと生きる智慧(ちえ)〉が集約されていると考えられています。

日蓮宗と日蓮正宗

「日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)」は、日蓮宗を開いた日蓮聖人の教えを大事にしている宗派。日蓮聖人を本仏とし、日蓮大聖人と呼びます。もともとは同じ日蓮宗でしたが、日蓮聖人の入滅後に弟子たちのなかで思想の違いが生じて分派。そのため、教えも異なり、日蓮正宗では本仏に向かって「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えることで〈いかなる人も仏の境涯が現れる〉と説いています。

日蓮宗においてのお葬式の意味や特徴。

〈今を生きる〉を大切にしている日蓮宗では、今世で功徳を積めば来世など心配をする必要がない、この世のなかで仏になろうと説いています。また、仏さまを信じることでお釈迦さまのいる霊山浄土(りょうぜんじょうど)へ行けるとも考えられています。
そのためお葬式は、故人が穏やかにこの世を離れ、霊山浄土へ向かっていけるための儀式。日蓮宗がもっとも大事にしているお題目「南無妙法蓮華経」を参列者全員で唱えて、旅立たせるのです。

戒名ではなく、「法号」

授戒して仏弟子になったことを表す「戒名」。日蓮宗では戒名ではなく、「法号」を授かります。日蓮聖人の〈法華経に帰依することが持戒にまさる〉という教えによるもので、信仰することによって法名が与えられるのです。そのため、ほかの宗派がお葬式で行う「授戒」というしきたりはありません。
法名自体は二文字で構成され、そこに「院号」「道号」「日号」「位号」が加わり、日蓮宗独自のもの。これらを総じて法名とするのが一般的です。

鳴り物を使う

日蓮宗のお葬式では、「鳴り物」と呼ばれる法具をたくさん使うのも特徴のひとつ。シンバルのような「妙鉢(みょうばち)」は互いをすり合わせるように鳴らし、木魚の代わりに読経時に鳴らす「木鉦(もくしょう)」は違いカンカンと高い音がします。そのほかにも、「団扇太鼓(うちわだいこ)」や「銅鑼(どら)」などが使われ、ときには雅楽が捧げられることもあります。
これら鳴り物は故人を霊山浄土へと正しく導いたり、邪気や魔を祓ったりするために使用するといわれています。

死装束には本尊やお題目が書かれている

亡くなった人は霊山浄土へ向かうため、旅の装束をまとわせます。いわゆる「死装束」で、一般的には「経帷子(きょうかたびら)」と呼ばれる、お経が書かれた白い着物を着せます。
日蓮宗の経帷子には、日蓮聖人が創始した曼荼羅図で本尊とされる十界曼荼羅(じっかいまんだら)や、お題目である「南無妙法蓮華経」が書かれています。 また、日蓮宗では行事などで「行衣(ぎょうい・ぎょうえ)」を着用する場合も多く、こちらを経帷子として着用することもあるようです。

日蓮宗のお葬式の流れ。

日蓮宗のお葬式でも、ほかの宗派と同様に〈通夜→葬儀→火葬〉を2日間で行うのが一般的。また、通夜式までに「枕経」をあげ、ご遺体を安置している場所で行われるケースが多いようです。
通夜式の次の日に営まれる葬儀・告別式の大まかな流れはこちらです。

僧侶の入堂

参列者は事前に会場に入って着席しておきます。僧侶が入ってきたら一礼をして迎えましょう。

開式の辞

司会者など進行を担当する人が、開式を宣言します。

総礼(そうらい)

僧侶と参列者が合掌。参列者は僧侶にならうといいでしょう。その後、お題目である「南無妙法蓮華経」を3回唱えて礼拝します。

道場偈(どうじょうげ)

仏さまを招くために、声明(しょうみょう)である「道場偈」を流します。

三宝礼(さんぽうらい)

「仏」「法」「僧」を三つの宝として敬い、立ったり座ったりの起居礼(きこらい)で礼拝します。

勧請(かんじょう)

本仏である久遠実情(くおんじつじょう)の本師釈迦牟尼仏 (ほんししゃかむにぶつ)をはじめ四菩薩、諸仏諸尊、日蓮聖人を招く儀式です。

開経偈(かいきょうげ)

読経の前に「偈」で法華経の功徳をたたえ、尊んで守ることを誓って教義の真義の会得を願います。

読経

「方便品」など法華経の重要な諸品を読み、教えを聞きます。

咒讃鐃鈸(しゅさんにょうはち)

声明を唄い、器楽を演奏して諸仏を供養します。こちらは複数の僧侶を招いたときに行われます。

開棺

僧侶がお焼香をしてお棺の前へと進み、中啓(ちゅうけい)という先端が半開きとなっている扇子でお棺のふたを3回打ち鳴らしながら開棺の文を唱えます。次の引導の前に悟りに入ることを予告するものです。このタイミングで、お膳やお供えものを祭壇に捧げます。

引導

僧侶が霊前へ進んで払子(ほっす)を3回ふり、さらにお焼香を3度して引導文(いんどうもん)を読みます。これにより、故人が今世に別れを告げ、新たな決意で仏のいる霊山浄土へ行けるよう導きます。

焼香

霊前に香りを手向け、故人の旅立ちを祈ります。

祖訓(そくん)

日蓮聖人が遺した言葉を拝読します。

唱題(しょうだい)

日蓮宗のお題目「南無妙法蓮華経」を唱えながら、お焼香します。お焼香は題目が終わるまでに終了させます。

宝塔偈(ほうとうげ)

次の回向の前に、法華経の功徳を讃える偈文を唱えます。

回向(えこう)

故人の成仏を願って供養し、故人が仏とともに霊山浄土へと旅立つことを祈ります。

四誓(しせい)

人間をはじめとしたすべての生きものを救う、4つの誓いの言葉を唱えます。

三帰(さんき)

法要の終わりに、「仏」「法」「僧」の三宝に帰依して仏道に精進することを誓います。

奉送(ぶそう)

法要がおわり、お招きしていた仏さまたちをお送りする声明を流します。

閉式の辞

司会者が閉式を宣言します。

僧侶の退堂

僧侶が退場を、参列者で見送ります。 僧侶の退場で式は終了。所要時間は僧侶の入場から数えて45分〜1時間程度が一般的です。

出棺

お棺を車に運び入れて出棺。このタイミングで喪主のあいさつや参列者との最後のお別れをする場合も多いようです。

火葬

火葬場でご遺体を火葬します。火葬炉の前で、参列者が最後のお別れをすることもあります。火葬を終えると拾骨しますが、このとき僧侶が「自我偈(じがげ)」を読み上げ、参列者はお題目や回向文を唱えながらお骨を拾います。

初七日法要

人が亡くなると四十九日まで七日ごとに法要し、亡くなった日を1日目と数えて7日目には「初七日法要」を行います。しかし近年は仕事や学校の関係で7日後に再び集まるのが困難になるという理由から、繰り上げて行うのが一般的になっています。 日蓮宗においてもその傾向はあり、お葬式の当日に初七日法要を営むご家族が増えています。
お葬式と同日の法要には、火葬後に式場に戻る「戻り初七日」や葬儀・告別式につづいて行う「式中初七日」という方法があります。どちらにしても事前に寺院や葬儀社と相談し、了承を得ておくことが重要です。

お焼香の回数や表書き、参列者のマナーに違いはあるの?

日蓮宗のお葬式では、参列者のマナーもほかの宗派と異なるところがあります。事前に確認し、落ち着いてお葬式に参列しましょう。

日蓮宗の数珠

日蓮宗の正式な数珠は、「勤行数珠」と「装束数珠」に大きくわかれます。一般の信徒は勤行数珠をもち、こちらは人間の煩悩の数である108の玉でできています。
主玉が108個の二重タイプで、2つの親玉からは3本と2本の房がつきます。そのなかのひとつである数取玉には10個の玉がついて長くなっており、このカタチは日蓮宗独特のもの。日蓮宗ではお題目を10回唱えると約1,000回のお題目を唱えたことになるといわれ、唱えた回数を数えるために使用されます。
一般参列者は正式な数珠をもつ必要はなく、手持ちの数珠を持参して問題ありません。
●数珠の作法
〈お題目を唱えるときや回向するとき〉
1. 3本の房がでている方を左手の中指に掛けます。数珠を1回ひねり、反対側を右手の中指に掛けます。
2. 房を手の外側にたらし、そのまま手を合わせます。
〈合掌するとき〉
1. 数珠を二重にして房を下にたらし、左手の親指と人差し指の間にかけます。
2. 右手を合わせて合掌します。
〈手にもつとき〉
数珠を二重にして房を下にたらし、左手で軽く握ってもちます。

お焼香の回数は3回または1回

日蓮宗のお焼香の回数は、正式には3回。「仏」「法」「僧」の三法に帰依する意味があるからです。とはいえ、参列者の人数が多いと3回ずつお焼香をすると時間がかかるので、僧侶は3回、参列者は1回がほとんど。この1回には、〈一心不乱に祈る〉という意味もあるため、心をこめておこないましょう。
また、日蓮宗のお焼香では、お香は押しいだいて(額に近づけて)、香炉へ焚きます。
●焼香の作法
1. 順番がきたら焼香台へ進み、ご家族と参列者に一礼します。
2. 焼香台の少し手前で立ち止まり、合掌して一礼します。
3. 焼香台の前まで進み、右手の親指・中指・人差し指でお香をつまみます。
4. お香を押しいだき、静かに香炉へくべます。(参列者:1回)
5. 数珠を手にかけて合掌。
6. 顔を遺影に向けたまま後ろに少し下がり、ご家族と参列者に一礼。席に戻ります。

お香典の表書きは「御霊前」

日蓮宗の不祝儀袋はほかの宗派とかわりなく、黒白水引がついた市販のものを使用して問題ありません。双銀や黄白の水引がついた香典袋を使う地域もあります。
表書きもほかの仏教宗派と同様に「御霊前」が一般的で、「御香典」と書いても問題ありません。ただし、こちらを使うのは四十九日まで。それ以降、故人は仏さまになると考えられています。四十九日を過ぎお香典の表書きは「御仏前」としましょう。
記入には薄墨の筆ペンを使用し、水引の下のスペースには差出人の名前をフルネームで書き入れます。参列者には同じ名字の人が複数いるケースもあります。名字だけでなく、フルネームで記入しておくと親切です。
お香典の金額は、一般的なお葬式とかわりありません。会社関係や友人・知人は3,000円〜10,000円、親族は10,000円〜30,000円、血のつながりの濃いご家族であれば50,000円〜100,000円が相場だといわれています。
とはいえ、香典の相場やマナーは故人との関係や地域の風習で異なりこともあります。迷ったときは周囲の人に相談してみるといいでしょう。

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