お葬式コラム

遺産相続の流れ。いつから、なにをすればいい?

お葬式で大切な人を見送ったあとは、供養の区切りとして一息つきたいところです。しかし、お葬式後にもやることがたくさんあり、そのひとつが「遺産相続」。〈うちはそんなに財産がないから…〉という方もいますが、多くの場合、亡くなった人はなんらかの遺産を残しています。
今回は、遺産相続の基礎知識や具体的な流れなどをご紹介。財産をめぐる遺産相続は、ときとしてトラブルにもつながります。円滑に進めるために事前に情報を得ておくことをおすすめします。

遺産相続の基本。はじまるタイミングや種類は?

「遺産相続」とは、亡くなった人(被相続人)が残した財産を、財産をもらう人(相続人)が受け継ぐこと。遺産相続の「遺産」は、亡くなった人の財産をさします。

相続のはじまるタイミング

日本では、民法882条で〈相続は死亡によって開始する〉と定められています。つまり、相続は財産を残した人(被相続人)が死亡した瞬間からはじまるのです。とはいえ、相続する人が訃報をすぐに受け取れない場合があります。遠くに住んでいるなどの理由で被相続人と相続人との交流が希薄になっていたりすると、被相続人の死亡が相続人へすぐに届きません。その場合でも、相続のスタートは死亡時点。相続手続きの期限も、そこが基準となることを覚えておいてください。

相続財産の分け方

多くの場合、故人(被相続人)が残した財産を複数人の相続人でわけて引き継ぎます。誰がなにを、どのように相続するのか? は、大きく3つの方法があります。

●法定相続:民法によって定められた相続人が、民法で決められた分だけ相続する。
●遺言による相続:故人が残した遺言書に従って相続を決める。
●分割協議による相続:すべての相続人で協議し、相続財産の分割を決める。

遺言書があるなら、遺言書に従うのが原則。遺言書がない場合は、民法に従う「法定相続」や全員で話し合う「分割協議相続」などで決めます。

相続の種類

故人が残した財産は相続人が受け継ぎますが、〈相続しない〉という選択もできます。どのように財産を相続するのか? は、以下の3つの種類から選べます。

●単純承認:プラスとマイナスを含めたすべての財産を無条件で相続する。
●限定承認:条件付きの相続で、プラスの財産を超えたマイナスの財産は相続しない。
●相続放棄:相続人とみなされず、すべての財産を放棄する。

「限定承認」と「相続放棄」の申し立てには期限があり、相続開始から3ヶ月以内に行わないといけません。3ヶ月を過ぎると自動的に「単純承認」と判断されます。とはいえ、相続放棄の場合は3ヶ月を超えてもできる可能性があるそう。詳しくは、専門家にご相談ください。

相続人について。親族なら誰でも相続できるの?

日本では相続できる権利を有する人を民法で明確にされており、民法によって定められた相続権をもっている人は「法定相続人」と呼ばれます。
相続人と法定相続人は同じように考えられるのですが、実は意味が異なります。相続人は〈実際に財産を受け継ぐ人〉に対し、法定相続人は〈財産を相続する権利のある人〉。遺産の相続は放棄できるので、法定相続人が財産の受け継ぎを拒否した場合は相続人になりません。

法定相続人の対象者

民法で定められている法定相続人には、「配偶者相続人」と「血族相続人」がいます。配偶者相続人は故人の夫や妻、血族相続人は故人と血のつながりのある子や親などのこと。この配偶者以外の血族相続人で注意したいのが、優先順位があること。血縁関係があるすべての親族に権利が与えられるわけではなく、先順位の人がいると後順位の人は相続人になれません。ただし、同じ順位の人が複数人いる場合は、すべての人に相続の権利を与えられます。

●血族相続人の優先順位
第1順位:子および、その代襲相続人
第2順位:両親などの直系尊属
第3順位:兄弟姉妹および、その代襲相続人

こちらにある「代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)」とは、本来の法定相続人が既に死亡しているなどの理由で相続できないときに代わって相続する人のこと。例えば、親である被相続人が亡くなったときに法定相続人である子どもが既に亡くなっている場合、孫が代わりに相続できるのです。

法定相続人以外でも相続できる?

日本において財産を受け継ぐ権利のある法定相続人は、民法886条から890条にて明確に定められています。そのため、故人の残した財産は基本的に法定相続人が相続します。
では、法定相続人以外は故人が残した財産を引き継げないのか? というと、そうではありません。相続ではなく、財産を贈与する「遺贈(いぞう)」というカタチなら、法定相続人ではない第三者にも無償で財産を譲れます。ただし、遺贈を行うには被相続人の意思を証明する必要があり、「遺言書」がないと実現しないといわれています。

相続する遺産には、プラスとマイナスがある。

遺産相続は故人が残した財産を受け継ぐもの。この財産という言葉には、〈金銭的な価値があるもの〉という意味があるため、よいイメージばかりをもつかもしれません。しかし、遺産相続の対象となる財産には〈プラス〉と〈マイナス〉があります。また、故人が亡くなったことによって受け取る「みなし相続財産」というものあることも知っておいてください。

プラス財産

プラスの財産には現金などの「金融資産」、車や貴金属など動かすことのできる「動産」、土地や住宅など動かせない「不動産」、さらには電話加入権などの「権利」も含まれます。

●対象となる主な「金融資産」
・現金や預貯金
・株式や国債、小切手などの有価証券
・貸付金や売掛金 ……など

●対象となる主な「動産」
・自動車やバイク、船舶
・宝石や貴金属
・美術品や骨董品
・家電製品や家具 ……など

●対象となる主な「不動産」
・土地や住宅
・借家や店舗
・農地や山林 ……など

●対象となる主な「権利」
・電話加入権
・ゴルフ会員権
・借地権
・特許権や著作権などの知的財産 ……など

主なマイナス財産

遺産相続で受け継ぐマイナス財産には、ローンなどの「債務」のほか、住民税などの「公租公課」、「葬式費用」も対象です。

●対象となる主な「債務」
・住宅や車などのローン
・消費者金融や銀行への借金
・保証債務や連帯債務
・クレジットの支払い ……など

●対象となる主な「公租公課」
・未払いの所得税や住民税、固定資産税など
・未払いの医療費や健康保険料 ……など

●その他の対象
・葬式費用
・家賃や水道光熱費などの未払金
・買掛金や前受金 ……など

みなし相続財産

みなし相続財産とは、故人(被相続人)が亡くなったことによって受け取る財産のこと。こちらは財産をわける「遺産分割」の対象にならず、受取人がすべての財産を受け取れます。ただし、相続税の対象になることが多いのでご注意ください。

●対象となる主な「みなし相続財産」
・生命保険金や損害保険金
・死亡退職金
・3年以内の生前贈与 ……など

相続財産にならないもの

遺産相続のルールを定めている民法では、相続財産にならないものも記載されています。例えば、お墓や仏壇などご先祖さまを供養する「祭祀財産」。こちらは分割できないため相続財産に当てはまらず、非課税です。また、「生活保護受給権」や「親権」、「扶養義務」、「国家資格」など本人だけがもてる権利・義務も相続財産として扱われません。

●主な「祭祀財産」
・家系図や家系譜
・お墓や墓地
・仏壇仏具や神棚などの祭具 ……など

遺産相続の流れ。まずは、なにをするべき?

遺産相続に関する決まりごとは民法で定められています。とはいえ、残された財産やご家庭の状況によってやるべきことが変わり、いざそのときがきたら多くの人がとまどいます。わからないからといって、後回しにするのは危険。相続税の申請など遺産相続に関する手続きには期限が設けられているものが多く、のんびり構えていると期限オーバーにつながります。まずは基本的な流れを知り、そこからご自身の状況に当てはめて進めていくとスムーズです。

遺言書の有無を確認する

遺産相続は、〈遺言書のある・なし〉によってやることが大きく変わります。遺産相続の最初のステップとして、故人(被相続人)が遺言書を残していないかを確認しましょう。遺言書は故人の使っていた机や棚、金庫に保管されていることが多く、銀行の貸金庫に収めているケースもあります。公証人が作成した「公正証書遺言」であれば、公証役場で探せます。検索してみるといいでしょう。
自筆の遺言書を発見したら、勝手に開けてはいけません。未開封のまま家庭裁判所で検認してもらうのがルール。遺言書が「公正証書遺言」の場合、検認は必要ありません。
遺言書に記されていることは、財産を残した故人の意思。残された遺言書が有効と認められたら、内容にそって手続きするのが遺産相続の原則です。

相続人を調査・確定する

遺言書がない場合は、法定相続や分割協議による相続を進めます。民法では、法的に相続できる法定相続人を定めているので、それに従って相続人を確定させましょう。分割協議による相続でも相続人全員が協議に参加する義務があるので、相続人の確認はできるだけ早くするのが賢明。遺言書で財産を譲られる先として指定された「受遺者」も、相続人と同じ権利をもちます。
法定相続人と民法で定められているのは、故人の配偶者や血のつながりのある家族です。まずは、財産を残した故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本を調べ、相続の対象になる人を確認しましょう。つづいて、相続人となる人の戸籍も取得。対象者の生死を調査し、相続人の範囲を確定させます。ちなみに、相続人の戸籍は遺産相続に関する手続きをするうえで必要になります。このタイミングで入手しておくと、のちのち役に立ちます。

財産を調べる

次に、相続人が受け継ぐ財産を調べます。相続財産には金融資産や動産、不動産といったプラスの財産と、借金などのマイナスの財産があります。相続するにしても、放棄するにしても、財産の内訳がわかっていないと判断できません。また、相続税の申告にも財産とその価値を確定しておく必要があります。相続の対象になるものはすべて洗いだし、把握しましょう。洗い出した財産をリストにし、可視化しておくのも忘れずに!
財産の調査は時間がかかるので、できるだけ早く着手するのがおすすめ。また、不動産など素人では評価額の算定がむずかしい財産もあります。自分たちで調査がむずかしいときは、弁護士や司法書士、税理士など専門家への依頼を考えてみてもいいでしょう。

相続の種類を選ぶ

遺言書のない遺産相続には、3つの種類があります。すべての財産を引き継ぐ「単純承認」、プラスの範囲内でマイナスの財産も相続する「限定承認」、すべての財産を放棄する「相続放棄」。相続人はこれらの種類から選択できます。
どの選択がベストか? は、個人の考えや状況によるので簡単にいえません。プラスの財産が多いときは単純承認、プラスとマイナスでどちらが多いか不明なときは限定承認、マイナスの財産が多いときは相続放棄することが多いようです。
限定承認や相続放棄する場合は、財産を残した人が亡くなってから3ヶ月以内に申請しなくてはいけません。限定承認に関しては、相続人全員が共同で行う必要があることも覚えておいてください。一方の相続放棄は相続人が各自で判断でき、ひとりでも、全員でも放棄できます。
また、すべてを相続する単純承認の場合は申請の必要はありません。

遺産分割協議を行う

相続人の確定や財産の把握、相続の種類を選択したら、遺産分割協議に入ります。(遺言書のとおりに財産をわける場合、遺産分割協議は不要です)
遺産分割協議とは、遺産の分け方を話し合う場。すべての相続人が参加して、誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかを決めます。相続人がひとりでも欠けていると、協議結果は無効になるのでご注意ください。また、相続人が未成年の場合は代理人の参加も要します。
協議によって決まったことは「遺産分割協議書」として書類で残すのが決まりです。遺産分割協議においての決定は総意が原則なので、遺産分割協議書には相続人全員が署名・押印します。
遺産分割協議で意見がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。裁判官から調停案が提示され、すべての相続人が同意すれば調停が成立。成立しなければ、家庭裁判所が遺産分割の審判を示します。

相続の手続きをする

遺産分割協議で財産の分け方が決まり、遺産分割協議書を作成したら各種財産を引き継いでいきます。預貯金や有価証券は解約または名義変更を、不動産を相続する場合は所有者の名義を変更する「相続登記」をします。相続登記は2024年4月1日から義務化され、不動産の相続を知った日から3年以内に手続きしないと10万円以下の過料対象になるのでご注意ください。
また、動産である車やバイク、電話加入権などの権利を受け継いだ場合も名義を変更します。それぞれに必要な手続きを行ってください。
これら手続きには故人の戸籍謄本など必要書類のほか、遺言書もしくは遺産分割協議書を要するときがあります。手続きするときには持参するようにしましょう。

相続税の申告と納付

遺産相続では、さまざまな手続きが必要です。そのひとつが相続税の申告と納付。相続税とは、相続した財産に課せられる税金のこと。亡くなった人(被相続人)から財産を受け継いだ人(相続人)が支払います。申告には期限があり、被相続人の死亡から10ヶ月以内。期限を過ぎると延滞税などのペナルティが発生するので速やかに行いましょう。ちなみに、遺産分割協議が成立していない段階でも暫定的な申告・納付が可能です。
とはいえ、相続税はすべての相続人が支払うわけではありません。「基本控除」と呼ばれる非課税枠があり、設定された一定の額を超えた財産に対してのみ課税される仕組みです。

●相続税基礎控除額の計算式
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

相続人の数が多いほど基礎控除額が増え、1人だと3,600万円ですが、4人になると5,400万円にもなります。かなりの金額を控除されるため、実際に相続税を払っている課税割合は2022年度で9.6%。10%にも満たないのです。(国税庁「令和4年分 相続税の申告事績の概要」より)

一覧でチェック! 遺産相続に関するスケジュール。

人が亡くなってから、遺産相続を完了するまでにはやることがたくさん。さらに、あらゆる手続きも発生します。それらは期限があるものも多く、スケジュールを把握しておかないと期限超過を招いてしまいます。

こちらでは人が亡くなってから行う遺産相続に関係する手続きを、一般的なスケジュールとともにご紹介します。目安としてご活用ください。

●(亡くなって)7日以内
・死亡届の提出

●14日以内
・年金の受給停止の手続き
・健康保険の手続き
・介護保険資格の喪失届
・世帯主変更届の提出
・公共料金などの名義変更や解約

●できるだけ早く
・遺言書の有無の確認
・保険金の請求手続き
・遺言書の有無の確認
・自筆証書遺言の検認手続き
・相続人の調査と確定
・故人と相続人の戸籍謄本など書類の取得
・相続財産の調査、把握

●3ヶ月以内
・相続種類の選択
・相続放棄や限定承認の場合は家庭裁判所に申請

●4ヶ月以内
・準確定申告:故人(被相続人)の所得税の申請と納付

●早めに着手
・遺産分割協議の際の特別代理人の選任(相続人が未成年の場合は必要)
・(遺言書がない場合)遺産分割協議の実施
・(遺言書がない場合)遺産分割協議書を作成
・預貯金や有価証券などの解約・名義変更・換金
・不動産の相続登記
・車や電話加入権など必要な名義変更

●10ヶ月以内
・相続税の計算や必要書類の作成
・所得税の申告と納付 ……など

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