お葬式コラム

線香の作法。基本のあげ方と宗派別の違い。

仏壇やお墓へのお参りで故人やご先祖さまに手を合わせるとき、「線香」もお供えします。線香はお参り道具のひとつですが、〈なぜ、線香を供えるのか〉をしっかり理解している人はそう多くないかもしれません。
仏教において、線香のお供えには深い意味があります。また、線香のあげ方は宗派によっての違いがあるため注意が必要です。 今回のコラムでは線香を取り上げ、意味や種類、宗派別の作法など詳しくご紹介します。

線香は、仏さまに捧げる供物のひとつ。

「線香」とは、香りのする材料を細かくして練り込み、棒状に固めたお香のこと。線のように細長い形状をしていることから線香と呼ばれ、「綫香」とも書きます。先端に火をつけて燃やし、芳香のある煙をだして使用するのが一般的です。
線香の歴史には諸説あり、そのひとつが16世紀の終わりごろに中国から製法が伝来したというもの。製法は大阪・堺や長崎へと伝わって製造されるようになり、江戸時代には現在の線香のようなカタチとなって庶民にも広く普及していったようです。細長い線香は、一度火をつけると安定して燃焼します。とても便利だったことから、仏事や煎茶道のシーンで使用されるようになったといわれています。
現代でも線香の主な用途は仏壇やお墓へのお供えで、故人やご先祖さま、仏さまを供養するために捧げられる供物です。仏教には「五供(ごくう・ごく)」と呼ばれる供物の基本的な考え方があり、香・花・灯明・水・飲食の5つで構成されています。そのなかの香りのお供え「供香(ぐこう)」として線香をあげるのです。
また、香りのお供えには「焼香」という方法もあります。こちらは刻んだ香木や香料を調合したもので、つまんで香炉にくべるのが作法。焼香はお葬式や法要などの儀式で、僧侶が読経しているときに実施するのが一般的です。日常的な仏壇へのお参りではあまり行われていません。

お香と線香は違うの?

暮らしを彩る香りとして、「お香」を楽しまれている方も多いのではないでしょうか。〈お香と線香の違いがわからない〉という方もいますが、この2つは同じものです。線香は線のように細長いカタチに固めているお香のこと。つまり、お香というカテゴリーのなかに線香があるのです。
販売されている線香はパッケージなどが仏事仕様になっているため、〈仏事に使うのが線香、それ以外がお香〉とする見方もありますが、どちらもお香。ルームフレグランスなど暮らしを楽しむ香りとして、線香を使ってもかまわないのです。その逆として、好みの香りがするお香を仏事に使用しても問題ないとされています。

お供えだけじゃない! 線香をあげる意味。

故人やご先祖さまへのお供えだけでなく、線香をあげるという行為はさまざまな意味をもっています。それを理解しておけば、日々のお参りでもより心を込めて線香に火を灯せるのではないでしょうか。

故人の食物になる

仏教では〈死者は香りを食べる〉と考えられています。こちらは「食香(じきこう)」と呼ばれ、5世紀ごろにインドの学僧が著した仏教経典「倶舎論(くしゃろん)」にも〈諸の少福の者は唯だ悪香を食す。其の多福の者は好香を食す〉と記述されています。善行を行った死者は良い香りを食べ、悪行を尽くしたものは悪臭しか食べられないという意味で、良い香りを捧げて故人に食べていただくのです。
また、仏教では亡くなってから四十九日目に閻魔大王の裁きを受けて、故人の魂があの世へ旅立つとされています。その間、故人の魂はあの世とこの世をさまよい、食事は香りだけという考えもあります。そのため、四十九日法要を終えるまで線香を焚きつづける宗派や地域もあるようです。

故人と交流できる

天へと昇っていく線香の煙は、この世とあの世をつなぐ役割を果たすともいわれています。四十九日が過ぎると故人の魂はあの世へと旅立ってしまい、この世にはいません。仏壇やお墓から立ち昇る線香の煙は、狼煙のような働きをしてあの世の故人にお参りを知らせてくれ、煙をとおして現世の人間とあの世の死者が対話できると考えられています。線香は、故人とのコミュニケーションツールとしても活躍するのです。

お参りする人やお参りの場を清める

良質の香りをもつ線香には、浄化効果があるといわれています。仏教発祥の地・インドでは、現在でも地位のある人と会うときにはお香を焚くのがマナー。香りを行き渡らせて、人間や場所がもつ穢れ・邪気をはらうそうです。 日本の仏教でもその考えは浸透しており、仏教儀式やお参りの前には線香に火をつけて芳香を漂わせます。線香の良い香りがお参りする人の心身やお参りする場所を浄化してくれるため、清らかな状態で故人やご先祖さまに手を合わせられるのです。
このほか〈死者があの世へ向かうときの道標になる〉〈仏さまの智慧(ちえ)を広める〉など、線香をあげる意味は多様にあるようです

線香には、大きく2つの種類があります。

線香は、材料の違いから大きく2つにわけられます。それぞれ適した使用シーンもあるので、知っておきましょう。

匂い線香

椨(たぶ)というクスノキ科の常緑高木の樹皮粉を乾燥させて粉末状にしたものをベースに、白檀などの香木や香料、墨の粉末などを調合してつくられた線香。配合する香りの材料によって、さまざまな香りを楽しめます。
●主な使用シーン
仏壇へのお供えなど、お墓参り以外のお参りで使用します。

杉線香

杉を素材にした線香のこと。杉の葉や小枝を乾燥させて粉末状にし、練り込んで細長いカタチに固めます。匂い線香のように香料を加えないため、杉本来の素朴でやさしい香りを楽しめるのが魅力です。杉線香の歴史は古く、現在は主流になっている匂い線香よりも前から親しまれていたといわれています。
●主な使用シーン
煙の量が多いため、室内での使用に適していません。主にお墓参りでの線香として好まれています。

香りや形状もいろいろ、匂い線香のタイプ。

ご家庭や寺院で使う線香は、ほとんどが匂い線香。多様な形状や香りのものが発売されています。
種類が多いと〈どれを使えばいいのか〉迷ってしまうかもしれませんが、線香の選び方に決まりごとはありません。豊富なバリエーションのなかから、使いたいシーンや好みにあわせて選ぶといいでしょう。
●主な形状
※形状の表現やサイズ・燃焼時間はメーカーによって異なります。

ミニ寸

一般的な線香よりも短いサイズで、長さ9cm前後のものをミニ寸と呼びます。燃焼時間は10分〜15分程度。平日など忙しいときに、短時間でもお参りできるよう工夫された線香です。

短寸

スタンダードなタイプで、仏壇にあげる線香といえばこちらです。細長いカタチで、長さは14cm前後。燃焼時間は約25分〜30分で、〈お経を一回読む長さ〉とも考えられています。

長尺

一般的なものより長いのが特徴で、太さのバリエーションも豊富。長さは約25cmから70cmと幅広く、70cmのものは6時間以上も燃えつづけるそうです。主に寺院で使用され、燃焼時間は読経や座禅の時間を計る目安にもされています。

渦巻き

ぐるぐると渦を巻いているようなカタチをした線香です。燃焼時間が長く、一般的な渦巻き線香はひと巻きで約12時間も燃えているそう。ご遺体の安置時や通夜から葬儀、初七日までなど線香を絶やしたくないシーンで活躍します。

コーン(円錐型)

香りを楽しむお香の定番の形状ですが、線香にも使用されます。円錐型の先端に火をつけると煙がすばやく広がり、短時間で燃え終わるのが特徴。燃焼時間は10分程度のものが多いようです。灰も散らばりにくいため、手軽にお参りしたいときに便利です。
●代表的な香り(香木)

白檀

「白檀(びゃくだん)」は、線香のベースとなる香りの定番。英語名の「サンダルウッド」としても親しまれています。涼やかでほのかに甘く、ウッディなやさしい香りが心を落ち着ける効果があるといわれています。
白檀は、インドやインドネシアに多く分布する半寄生性の常緑小高木。インド・マイソール州で産出される「老山白檀(ロウザンビャクダン)」は、最高級の芳香をもつことで知られています。常温でも香りやすいのが特徴で、お香のほかにも仏像や扇子、念珠の原料としても活用されているそうです。

沈香

主に東南アジアで産出される「沈香(じんこう)」。普通の木材よりも重く、水に沈む木(沈水香木)であることからその名がつけられたそうです。
実は、沈香となる原木には香りがありません。虫食いなど外的要因で傷ついた木が傷を治すために樹液をだし、それが樹脂となったのちに成分を変質させて香りを放つようになったのが沈香です。
香調は産地や原木の種類よって違い、「甘味」「辛味」「苦味」「酸味」など複雑な香りが絡みあっているのが特徴です。また、漢方では生薬としても扱われ、鎮静・鎮痛効果があるといわれています。

伽羅

「伽羅(きゃら)」は沈香の種類のひとつで、最高級品をさします。ベトナムのごくわずかな地域でしか産出されないため、とても貴重な香木です。現代においても詳しいことはわかっていないそうで、沈香との違いは含まれる成分の違いだとされています。
伽羅の香りは「甘い」「酸味」「辛み」「苦み」「塩辛み」のすべてを満たし、〈五味に通じる〉といわれます。樹脂を多く含んでいるため、あたためなくても品よく香り立つのも特徴。昔から香りを愉しむ文化があった日本では、伽羅の価値は金に等しいとされてきました。織田信長・豊臣秀吉・徳川家康など、時の権力者たちが愛した香りとしても知られています。

線香はどうあげるの? お線香を供えるときの基本作法。

お参りするときの線香は、故人やご先祖さまのための大切な供物。無造作にあげてはいけません。まずは、シーン別の基本的な作法を知っておきましょう。

仏壇に線香を供える作法

(1)仏壇の前に座り、故人やご先祖さまに一礼して合掌します。
(2)マッチなどでロウソクに火を灯します。
(3)線香を手にもってロウソクの火で点火し、反対の手で仰いで炎を消します。
(4)線香を静かに香炉に立てます。※宗派によっては寝かす場合もあります。
(5)おりんを鳴らして合掌し、一礼します。※浄土宗と浄土真宗はおりんを鳴らしません。
(6)ロウソクの火を消し、仏壇の前から静かに離れます。
線香の火は消さず、燃え尽きるまで置いておきます。ただし、線香をつけたまま家を空けたり、寝てしまったりするのは危険。火事の原因にもなるので、その場合は線香の火を消してください。

お墓に線香を供える作法

(1)お墓の前で合掌し、一礼して「お墓参りにきました」とあいさつします。
(2)お墓を掃除し、きれいに整えます。
(3)花立にお花を生け、水鉢に水を注ぎます。菓子などのお供えがある場合は置きます。
(4)マッチなどでロウソクに火を灯します。
(5)線香を手にもってロウソクの火で点火し、反対の手で仰いで炎を消します。複数人でお墓参りするときは、束の線香に火をつけます。
(6)故人と縁の深い順番に線香をわけ、ひとりずつ香炉に供えて合掌します。線香は香炉の形状にあわせた向きで置きます。
(7)線香の火が燃え尽きるのを見届け、後かたづけをして帰ります。

線香のマナー

線香に火をつけるときは、ロウソクを使うのがマナー。お墓や仏壇に灯したロウソクから火をいただきましょう。ライターなどから直接火をつけるのは厳禁です。
また、線香の炎は手で仰いで消すのがルール。仏教では、飲み食いしたり、ときには悪い言葉を吐いたりする口は不浄だとされ、口からでる息を仏さまに吹きかけるのは失礼にあたります。線香やロウソクの火を息で消す行為は不作法だとされているので気をつけましょう。

本数やあげ方が違う! 宗派別の線香の作法。

線香の作法は宗派によっても異なり、仏壇への線香は宗派のしきたりにあわせて供えるのが基本です。違いのポイントは、〈本数〉と〈置き方〉。宗派別の線香のあげ方をご紹介しましょう。

天台宗、真言宗

●線香の本数:3本。
●置き方:手前(お参りする人の側)に1本、奥(仏壇側)に2本、香炉のなかで逆三角形がつくれるように立てます。

浄土宗

●線香の本数:1本。1本を2つに折ることもあります。
●置き方:香炉の真ん中に立てます。

浄土真宗 本願寺派

●線香の本数:1本を半分に折って、2本にする。※1〜2本を3つに折ることもあります。
●置き方:火のついている方を左側にして、香炉のなかに横向きで寝かせるように置きます。

浄土真宗 大谷派

●線香の本数:1〜2本を、2つから3つに折る。
●置き方:火のついている方を左側にして、香炉のなかに横向きで寝かせるように置きます。※線香に火をつけないで置く場合もあります。

臨済宗、曹洞宗、日蓮宗

●線香の本数:1本。
●置き方:香炉の真ん中に立てます。
線香のあげ方は宗派別だけでなく、寺院によっても異なる場合があるようです。迷うときは、菩提寺に確認するといいでしょう。

宗派はどちらにあわせるべき?

弔問で線香をあげるとき、故人とお参りする人の〈どちらの宗派の作法にあわせるべきか?〉悩んでしまうことも多いでしょう。
故人とご自身の宗派が異なるケースでは、〈故人の宗派にあわせる〉のが良いとされています。故人の宗派がわからないときは、ご家族に確認しておくと安心です。その場で質問してもマナー違反にはなりません。確認がむずかしい場合は、基本の作法で線香をあげるといいでしょう。

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