お葬式コラム

遺言書を残したい。種類や方法を教えて!

亡くなった人の財産を引き継ぐ遺産相続では、まず「遺言書」の有無を確認します。日本の遺産相続において遺言書に記されている内容はなにより優先され、故人が残した財産の分割に多く影響を与えるためです。
しかし、遺産相続で重要な役割を果たす遺言書も正しく作成されていないと効力を発揮できません。死後に自分の意思を伝えられる適切な遺言書がつくれるよう、遺言書の種類やできること、自分で書く自筆証書遺言の作成方法などをご紹介します。

遺言書とは、亡くなった人が財産に関する意思を示すもの。

「遺言」は、亡くなった人(被相続人)が自分の財産を〈誰に〉〈どのようなカタチで〉〈どれだけ受け継がせるのか〉という意思を表示するもの。それを書面として残すのが「遺言書」で、被相続人が生きている間に作成されます。
亡くなった人が残した財産を分配して受け継ぐ遺産相続において遺言書の効力は絶大です。遺言書がなければ財産は民法で定められた法定相続人で分割されますが、遺言書があれば相続人以外にも財産を渡せます。また、相続人たちで財産をわけるにしても、誰になにを相続させるかなどの指定が可能。遺言は財産を残した故人の意思なので、なによりも尊重されるのです。
このように、遺産相続において遺言書に記載されている内容は、民法で定められている相続人の順位や相続の割合より優先されます。故人が残した財産の受け継ぎは「遺言書」「遺産分割協議」「法定相続分」によって決められますが、優先関係は以下の順番です。 (1) 遺言書
(2) 遺産分割協議
(3) 相続法定分

遺言書には2つの方式がある

遺言書の方式は、大きく「普通方式」と「特別方式」にわけられます。特別方式は、被相続人が特殊な状況にあって普通方式で作成できない場合に適用される遺言書で、いくつかの種類があります。そのひとつの「危急時遺言」は、被相続人が死の危険に迫っているときの遺言。遺言書の作成には証人の立ち会いや家庭裁判所の確認が必要です。また、「隔絶地遺言」は遺言を残したい人が一般社会との交通が遮断された場所にいるときに認められます。
このように、特別方式は特殊な状況で作成するもの。遺言書の多くは普通方式で作成されるため、一般的に遺言書として表現されるのは普通方式です。

遺書と遺言書の違い

遺言書と似た響きをもつ「遺書」。同じように捉えられがちですが、遺言書と遺書はまったく違う役割をもっています。
遺書とは、それを書いた人が死んだあとに家族や友人などに読んでもらうために残すもの。手紙のように個人的なメッセージを伝えるのが主な役割で、書いている内容に法的な効力はありません。
一方の遺言書は、遺言を残す人が自分の財産をどのように相続してもらいたいのかを意思として示すもの。法的にも大きな効力をもち、遺言書が残されていれば、その内容どおりに遺産をわける必要があります。ただし、法的な効力を発揮させるためには、遺言書の要件を満たして正しく作成しなくてはなりません。

遺言書で書ける項目。どんな指定ができる?

遺言書に書かれている内容は遺産相続で大きな効力をもちます。重要な意味をもつため、なんでも記載していいわけではなく、法的に効力が認められる項目は民法で定められています。「法定遺言事項」と呼ばれ、相続や相続人、遺言執行人に関することなどの意思を示せます。
とはいえ、遺言書には法定遺言事項以外の項目も書けます。こちらは「付言事項」といい、法的な効力はもちませんが故人の意思として示すことはできます。
では、具体的にどのようなことを指定できるのでしょうか。

誰に、なにを、どのくらい相続させるのかを指定できる

遺言を残す人の意思で、〈誰に〉〈どの財産を〉〈どれくらい〉相続させるのかを指定できます。民法で定められている法定相続分と異なる財産配分になってもかまいません。民法では財産を受け取れる相続人が定められ、優先順位もあります。しかし、遺言書があれば、その内容が優先されます。遺言書で指定しておけば、法定相続人以外に財産を渡すことも可能なのです。

相続人を廃除できる

遺言を残す人が特定の人へ財産を渡したくないと願っている場合、相続人の権利をもつ人から相続権利を奪って廃除できます。とはいえ、相続人の廃除は重大な事柄。簡単にできることではなく、遺言執行人の選任など廃除するための要件を満たさないといけません。廃除したい人がいる場合は、専門家への相談をおすすめします。]

財産の寄付ができる

自分の財産をどこかに寄付したいと考える人もいるでしょう。その意思を遺言書に書いておけば、死後の実現が可能です。遺言による寄付は「遺贈寄付」といい、非営利団体や自治体で受け付けています。
寄付の意思があるときは、遺告書に寄付したい団体や寄付内容を明記します。寄付内容は〈A銀行の預金◯◯円を◯◯へ遺贈〉とのように財産の一部を特定しても、〈全財産のうち2分の1を◯◯へ遺贈〉と財産全体からの割合を指定してもかまいません。

未成年の後見人を指定できる

遺言を残す人に未成年の子どもがいて、さらには遺言者が亡くなると子どもの親権者がいなくなる場合は、誰を未成年者の後見人にするのかを指定できます。
指定された後見人は未成年者が成人するまで財産を管理し、監護や教育に関する責任も負います。とても重要な役割を担うため、信頼のおける人を選びましょう。未成年者後見人が努めを果たしているのかを監督する、未成年後見監督人もともに指定しておくと安心です。

遺言執行者を指定できる

遺言書に故人の意思が記されていても、それが実現できないと意味がありません。遺言書の内容を実行する権限をもつ人を「遺言執行者」とし、遺言書ではその人物を指定できます。
遺言執行者は財産の目録作成や管理、相続人の確定、金融資産の名義変更など多くの手続きを受け持ち、遺言を実現する中心人物としての権利と義務も生じます。大きな責任を背負うため、遺言書で指定されていても拒否できます。 また、遺言書で遺言執行者が指定されていない場合、必要に応じて遺言執行者の選任を家庭裁判所に申し立てられます。

遺言書には3つの種類がある! メリットとデメリットは?

遺言書の方式には普通方式と特別方式があり、多くは普通方式で作成されます。さらに、普通方式は3つの種類にわかれ、それぞれにメリットとデメリットがあります。

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、遺言者(遺言を残す人、被相続人)が自筆で作成する遺言書です。財産目録を除いた全文を手書きし、日付や氏名を記して押印すれば完成。手軽に作成できます。本文以外の財産目録はパソコンで作成したり、代筆を頼んだりしてもOK。ただし、すべてのページに署名と押印が必要です。目録として、預金通帳や登記簿謄本などをコピーして添付できます。
●メリット
・遺言書の作成に費用がかからない
・手軽に作成でき、書き直しもしやすい
・証人を立てなくていい
・自分で保管することもできる
●デメリット
・正しく作成できていないと無効になる恐れがある
・遺言書を紛失したり、死後に発見されなかったりするリスクがある※
・遺言書の内容を勝手に書き換えられたり、捨てられたりするかもしれない
・遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認してもらう必要がある※
※法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば法務局で保管でき、その場合は検認手続きが不要です。

公正証書遺言

「公正証書遺言」は、遺言者が口にした内容を公証人が文書にした遺言書です。公証役場で行われ、公証人のほか、作成に立ち会う証人が2人以上必要。作成した遺言書には、遺言者、公証人、証人、関わったすべての人が署名して押印します。また、遺言書の原本は公証役場で保管され、原本と同じ内容を記載した正本は遺言を残した本人が保管します。
●メリット
・効力のある遺言書を公証人が作成してくれる
・公証役場で保管されるため、捨てられたり、勝手に書き換えられたりしない
・遺言書を発見されやすい
・遺言者の死後、家庭裁判所での検認手続きをしなくていい
・文字を書くのが困難な人でも作成できる
●デメリット
・財産に応じた費用が発生する
・遺言書の作成や書き直しに手間がかかる
・2人以上の証人を立てる必要がある

秘密証書遺言

自筆証書遺言と公正証書遺言のほか、「秘密証書遺言」という種類もあります。秘密証書遺言は内容を秘密にし、存在していることだけを公証役場に認めてもらう遺言書。遺言者が作成し、封印したのちに公証役場へ持参して存在を証明してもらいます。遺言書の作成は、手書きでも、パソコンを使用してもOK。誰かが代筆してもかまいません。ただし、公証役場への提出時には遺言者のほか、2人以上の証人の立ち会いが必要です。
現状として、遺言書は自筆証書遺言または公正証書遺言が一般的。秘密証書遺言はほとんど採用されていないようです。
●メリット
・遺言書の内容を誰にも知られない
・パソコンや代筆でも作成できる
・遺言書の存在が知られやすい
●デメリット
・無効になるリスクがある
・紛失したり、隠されたりする恐れがある
・2人以上の証人を立てる必要がある
・遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認してもらう必要がある

自分で書く、自筆証書遺言の作成方法。

自筆証書遺言は、遺言者(遺言を残したい人)が自分で書く遺言書。遺言の内容に加えて署名と日付、押印があればよく、書き方に厳密な決まりはありません。証人も不要で手軽な反面、ミスによって認められない恐れがあるので注意してください。
また、自筆証書遺言は作成方法にも決まりごとがなく、ご自身のペースでいつ・どこで書いてもかまいません。こちらでは、自筆証書遺言を作成する一般的な流れをご紹介しましょう。

自分の財産を把握し、財産目録をつくる

遺言書は、遺言者の財産を、〈誰に〉〈なにを〉〈どのくらい〉相続させるのかを指定するもの。それを決めるためには、遺言者がご自身の財産を把握しておくことが大切です。遺言を作成する前に、まず自分の財産を洗い出しておきましょう。そのうえで、財産をカテゴリー別に整理してリスト化。預金通帳や不動産登記簿などの書類も集めておきます。
作成した財産リストは、遺産相続に資料としてつける「財産目録」にできます。財産を特定できるよう、具体的に記載しておくのがポイント。財産目録はパソコンなどで作成しても問題はありません。

法務省の様式にあわせる

自筆証書遺言であっても、様式は法務省令で定められている様式で作成する必要があります。様式を守らないと無効になるのでご注意ください。
●法務省の様式
・A4サイズの用紙で、裏面にはなにも記載しない。
・上側5mm、下側10mm、左側20mm、右側5mm以上の余白を確保する。
・遺言書本文と財産目録には、各ページに通し番号でページ番号を記載する。
・複数ページでとじあわせない。

遺言を書く

法務省の様式に適応した用紙に、遺言者が自ら遺言を書きます。このとき、〈全文を手書きする〉ことを必ず守ってください。一部でもパソコンで作成すると無効になります。
使用する筆記用具に決まりはありませんが、改ざんを防ぐためにボールペンや万年筆など消せないタイプのペンがおすすめ。縦書きでも、横書きでもかまいません。
遺言の内容は、渡す相手と譲る財産を書けばOK。普段遣いの言葉で、法律用語などむずかしい言葉を使う必要はありません。ポイントは、わかりやすく、具体的であること。
例えば、〈長男に貯金を譲る〉だけでは伝わりにくいので、〈長男に◯◯銀行◯◯支店 口座番号◯◯◯◯の預貯金をすべて相続させる〉など明確に記します。不動産の場合は、住所ではなく登記簿に記載されている情報を書きます。表記が長い場合は財産目録をつけ、遺言書の本文では〈別紙 目録の第1に記載した不動産〉と簡略化します。
また、財産を残したい相手が推定相続人の場合は〈相続させる〉〈遺贈する〉とし、それ以外の人であれば〈遺贈する〉と表現すればいいでしょう。

遺言執行人を指定する

遺言執行人とは、遺言書の内容を実行してくれる人。せっかく遺言を残しても遂行されないと意味がないため、スムーズかつ確実に遺言どおりの相続が実現できるよう指定しておきます。
遺言執行人は、未成年者や自己破産者でなければ誰でも指定できます。とはいえ、遺言者の意思のとおりに相続を実現させるのはとても手間がかかります。煩雑な手続きも要するため、信頼できる相続人や弁護士などの専門家を指定することが多いようです。
遺言執行人が決まったら、遺言書に指定した遺言執行人の住所、氏名、職業、生年月日を記載します。

氏名と日付を記し、押印する

遺言を書き終えたら、改めて内容を確認しましょう。問題がなければ〈遺言者の氏名〉、〈遺言書を作成した年月日〉を記入し、〈印鑑を押す〉ことで完成させます。これらがないと遺言書として認められないので忘れずに。〈遺言者の住所〉も書いておおくといいでしょう。
作成日は西暦でも和暦でもOK。ただし、〈◯月◯日 吉日〉という記載はNGです。名前もペンネームや通称は認められません。必ず住民票や戸籍に記載されているとおりに書いてください。

自分もしくは法務局で保管する

書き上げた遺言書は、紙のままでも、封をしても、どちらでもかまいません。しかし、書き換えられるリスクを軽減するため、封筒などに入れて封印しておくのがおすすめ。「遺言書」と表書きしておけば、遺言者の死亡後に発見されたときにわかりやすいでしょう。
自筆証書遺言の保管は、自宅や銀行の貸金庫、弁護士など専門家に預かってもらうなどさまざまな方法が選べます。自宅であれば金庫や仏壇、タンスの引き出しなどで保管することが多いようです。
また、2020年からは自筆証書遺言の原本とデータを法務局が保管する「自筆証書遺言書保管制度」がスタート。法務局にあるので遺言書の紛失や内容改ざんの恐れがなく、自筆証書遺言書を安全に保管できます。さらに、遺言者が亡くなったあとの検認手続きが不要になるのも大きなメリットです。

文字を間違えたら?

自筆証書遺言書は全文を手書きするため、文字を間違ってしまうこともあるでしょう。また、読み返したときに内容を変更したくなる人もいるかもしれません。
自筆証書遺言では文字の訂正・変更にもルールがあります。文字を間違って訂正したい場合は、間違った部分の上に二重線を引いて消し、近くにふきだしを入れて正しい文字を書きます。訂正部分には押印も必要です。さらに、下部の余白に〈4字削除、4字加入〉などと変更箇所を追記し署名します。
この訂正や変更がルールに沿っていないと、遺言書そのものが無効になる可能性があります。訂正・変更・追加がある場合は、遺言書の書き直しをおすすめします。

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