お葬式コラム

納棺の流れ。誰が参列して、何をするの?

故人をお棺に納めることを「納棺」といいます。人が亡くなると、あの世へと旅立つまでにいくつかの儀式で弔いますが、ご遺体をお棺に納める「納棺の儀」は通夜式の前に行う最初の儀式。しかし、通夜式や告別式に比べてなじみがないため、わからないことも多いといわれています。大切な儀式をスムーズに、心を込めて執り行えるよう、今回は納棺についてのあれこれを詳しくご紹介します。

納棺は、故人の身支度をしてお棺に納めること。

安置しているご遺体は、通夜式までにお棺に納めなくてはなりません。そのことを「納棺(のうかん)」といい、納棺にあたって故人の身支度も整えます。
仏教では亡くなった人は来世に向かって旅をするといわれており、故人は四十九日もの間、きびしい道のりを進みます。そのため、残された者たちは旅の無事を祈って故人に旅支度をして送りだすのです。

ご遺体を清めて旅の支度を整え、お棺にお納めしたのちに故人といっしょにあの世へ送る副葬品も入れる。この一連の流れは「納棺の儀」とも呼ばれ、故人を弔う最初の儀式となります。ご遺体をお棺に納めるだけでなく、故人があの世へと安心して旅立てるよう支度を整えるのも納棺の大きな役割です。

故人と最後にふれあえるお別れの場でもある

ご遺体は、お棺に納められるとお顔しか見られなくなります。そのため、納棺の儀式は、故人の身体に直接ふれられる最後のタイミング。残されたご家族にとっても、大切な別れのひとときとなるでしょう。
納棺の場では、旅の無事を祈りながら身支度を整えるだけでなく、故人の身体にふれながらお別れすることもおすすめします。

納棺を行うタイミングや場所。儀式へは誰でも参列できるの?

多くの人にとって納棺の儀式はあまりなじみがなく、わからないこともたくさんあるのではないでしょうか。まずは、行うタイミングや場所など基本的なことをご説明します。

納棺のタイミング

納棺を行う日にちや時間に決まりごとはないので、ご家族が望むタイミングで行って問題ありません。ただし、通夜式までには終えるようにしてください。近年は通夜式当日、通夜式開始の3〜4時間前に執り行うケースが多いようです。
かつて、納棺は親族たちですべてを行っていました。しかし、現代の納棺の儀式は葬儀社など専門業者に任せるのが一般的です。納棺のタイミングも、お葬式の運営を担当する葬儀社に相談して決めるといいでしょう。

納棺の儀式に必要な時間

納棺の儀式に必要な時間は、行う内容によって変わります。簡略化したものであれば30分で終了しますが、さまざまな儀式をじっくり丁寧に行えば2時間はかかります。葬儀社と相談し、想定の時間を把握しておきましょう。必要な時間がわかると、納棺の儀式をはじめる時間も算出しやすくなります。例えば、通夜式の開始が19時からで儀式の想定時間が1時間程度であれば、ゆとりをもって14時から納棺をはじめるといったスケジュールが立てられます。

納棺を行う場所

納棺の場所に決まりごとはありませんが、ご遺体を安置している場所で行うことが多いようです。ご自宅で安置しているならご自宅で、斎場やセレモニーホールの安置室であればその施設内で儀式をします。ただし、ご遺体を専用施設に安置していると、その場所で納棺できない場合があります。安置場所で行えないときは、通夜式を行う会場へご遺体を搬送して納棺の儀式を行うこともあるようです。

納棺の儀式に参列する人

納棺の儀式に参列するのは近親者です。原則として故人の配偶者や子ども、孫などが立ち会います。生前の故人と親しかったからといって、友人・知人、仕事の関係者は遠慮し、通夜式や葬儀・告別式に参列します。
とはいえ、時代とともにお葬式のスタイルや考え方は変化しています。ご家族から“故人が親しかったご友人といっしょに納棺したい”と望まれれば、ぜひ参列してください。また、近年は通夜式や葬儀・告別式をしない「直葬(火葬式)」も増えています。納棺の儀式をお別れの場とし、親族などが参列するケースもあるようです。

仏式で行う納棺の儀式。一般的な流れはこちら。

納棺では、さまざまな儀式を営みます。今回は、仏式で執り行う納棺の儀式の一般的な流れをご紹介。それぞれに意味があるので、心を込めて行えるよう内容や作法を知っておくといいでしょう。

儀式の進行は、納棺師など葬儀社の専門スタッフが担ってくれるケースが多くなっています。ご家族は安心して任せ、そばで見守りながら故人の身支度などできるところはお手伝いください。

「末期の水(まつごのみず)」をとる

「末期の水」とは、亡くなった人の口元を水で潤す儀式で、お釈迦様が入滅するときに水を求められたことが由来となっています。末期の水は「死に水」とも呼ばれ、昔は臨終のときに行われていましたが、現代では死後にすることが多いようです。病院などで末期の水をとっていたら、納棺時は省略しましょう。また、地域や宗派によっても行わない場合があるので確認しておきます。
作法としては、箸先に脱脂綿などを巻いたものに水をふくませ、参列者のなかから血縁の濃い順に故人のくちびるへ当てていきます。順番は、故人の配偶者または喪主→子ども→親→兄弟姉妹→子どもの配偶者→孫というのが一般的です。
すべての参列者が終えたら、最後に故人のお顔をきれいに拭きます。このとき、「お疲れさま」「ありがとう」などのお声をかけるといいでしょう。

「湯灌(ゆかん)」などでご遺体を清める

納棺にあたって故人の身体を清めます。これには、腐敗が進んだご遺体をきれいにする目的とともに、故人がまとっている生前の穢れ(けがれ)や現世の煩悩を洗い落とすという意味もあるそうです。
ご遺体を清める方法はいろいろあり、そのひとつが湯で洗う「湯灌(ゆかん)」です。湯灌は昔、たらいのお湯で親族が洗っていましたが、現在は専用の設備を使用するのがほとんど。セットプランのお葬式ではオプションになっていることが多いので、葬儀社に確認しておきましょう。
湯灌をしない場合は、故人の身体をアルコールで拭いて清める「清拭(せいしき)」をします。また、近年は湯灌の代わりに、殺菌・防腐処理をすることで生前の姿をキープできる「エンバーミング」を選ぶ方も増えています。

「死化粧」で身なりを整える

「死化粧(しにげしょう)」とは、ご遺体の身なりを整えること。近年は「エンゼルケア」「エンゼルメイク」とも呼ばれ、男性・女性を問わず施します。これによって臨終時の苦しみの跡を消し、美しく安らかな見た目で来世へ旅立たせられるため、ご家族の気持ちを癒やす役割も果たします。
死化粧をするのは納棺師などの専門家や葬儀社のスタッフ、また臨終を迎えた病院で看護師が行う場合もあります。もちろん、ご家族が参加してもかまいません。使用する道具は、故人が生前に愛用していたものが多いようです。
手順として、まずは湯灌で濡れた髪をドライヤーで乾かしてセットし、頬がこけてやつれが目立つ場合は綿を含ませます。必要であれば爪の手入れも加えます。
男性はヒゲを剃り、顔色が悪ければファンデーションやコンシーラーで肌を整えます。女性は薄化粧をし、チークやルージュなどで赤みを加えると顔色が華やぎます。ご遺体の肌は乾燥しやすいので、男女とも保湿ケアをしておくといいでしょう。

「死装束」を着せて旅支度をする

納棺の前には「死装束(しにしょうぞく)」を故人に着せます。仏式の死装束は「仏衣(ぶつえ)」といい、経文が書かれた修行僧の衣装「経帷子(きょうかたびら)」などを身につけさせることで、来世への険しい旅を無事に乗り越えられるようにします。
仏衣以外にも「脚絆(きゃはん)」や「手甲(てっこう)」、「頭陀袋(ずだぶくろ)」など旅の装束はいろいろ。ご遺体への着付けはむずかしいため、基本的に葬儀社のスタッフなど専門家で行いますが、簡単に身に着けられるものはご家族の手で身につけさせてください。
また、現代では死装束ではなく、故人が生前に愛用していた洋服を着せたいと望むご家族もいらっしゃいます。ご遺体に洋服や着物を着せることは可能なので、葬儀社の担当者に相談してみるといいでしょう。

「死装束」については別のコラムで詳しくご説明しています。こちらもあわせてお読みください。

ご遺体をお棺に納める「納棺」をする

死装束で旅支度を整えたら、いよいよ納棺です。ご家族でご遺体を支え、ゆっくりお棺のなかへ納めましょう。ご家族だけで納棺がむずかしいときは、葬儀社のスタッフがサポートするケースもあります。
故人をお棺に納めたら、胸の前で手を組ませます。髪や装束などに乱れが見られたら、きれいに整えてください。

お棺に「副葬品」を納める

ご遺体を納めたら、「副葬品」もお棺に入れます。副葬品とは死者とともに埋葬される物品のことで、あの世に旅立つ故人への手向けの品ともいえます。生前の愛用品などご家族が故人を想って選び、お棺に納めましょう。 ただし、副葬品にはルールがあり、〈燃えるもの〉しかお棺のなかに入れられません。ご遺体は火葬されるため、〈燃えないもの〉は副葬品にできないのです。また、燃えるものでも、分厚い本など副葬品に適していないものもあります。火葬時のトラブルを防ぐためにも、〈できる・できない〉を把握したうえで副葬品をお選びください。

「副葬品」については別コラムで詳しくご説明しています。ぜひご参照ください。

お棺のフタをする

副葬品を納めるとお棺に入れるものがすべてそろうので、お棺にフタをして合掌します。このとき、お棺のフタは置くだけにし、釘打ちはしません。地域の風習や宗派などにもよりますが、「釘打ちの儀」として出棺前に釘を打つ儀式が行われることも多いようです。
最後にお棺に「棺掛け(かんかけ)」と呼ばれる布を掛け、納棺の儀式は終了。お棺を祭壇に安置し、通夜式を待ちます。ただ、近年は意匠を施した美しいお棺もあるため、棺掛けを使用しないケースも増えています。

納棺の内容や作法は地域や宗派によっても異なります。菩提寺や年配者の親族、葬儀社の担当者など地元の風習に詳しい人に相談し、事前に確認しておくといいでしょう。

参列時の服装など、納棺の儀式においてのマナーと注意点。

納棺は大切な儀式とはいえ、通夜式や葬儀・告別式とは違います。そのため、服装などのマナーに悩まれる方も多いのではないでしょうか。不安なく納棺の儀式ができるよう、参列時の服装マナーや執り行うときの注意点などをご紹介します。

参列者の服装〈ご自宅で納棺する場合〉

納棺の参列者は、近親者のみがほとんど。ご自宅で納棺する場合は、〈平服〉で参列して問題ありません。とはいえ、平服は普段着ではありません。弔事での平服は「略礼装(略喪服)」とみなす場合もあるので、場にふさわしい装いをしましょう。
男性はシックな色合いのスーツ、女性もダークカラーのスーツやワンピース、ブラウスとスカートにジャケットのコーディネートもOKです。ヘアやメイクも落ち着いたスタイルにし、結婚指輪以外のアクセサリーは外します。
とはいえ、ご家族は通夜式で喪服を着用します。納棺から通夜式まで時間があまりない場合は、納棺時から喪服を着用しておくとバタつかず落ち着いて行動できるでしょう。

参列者の服装〈葬儀場で納棺する場合〉

葬儀場で納棺するのであれば、喪服で参列するのがおすすめ。同じ施設内で納棺の儀式を行い、そのまま通夜式となるので着替える時間や手間が省けます。
喪服には種類があり、喪主や親族が着用するのは格が高い「正式礼装(正喪服)」が基本とされてきましたが、近年は「準礼装(準喪服)」が一般的になっています。通夜式は「略礼装(略喪服)」でもかまわないとされていますが、略礼装で訪れる参列者との兼ね合いもあり、正式礼装や準礼装を身につける方が多いようです。
男性で洋装の場合は、モーニングスーツが正式礼装。準礼装であればブラックスーツを着用します。ただし、ビジネス用のブラックスーツは礼服ではないので注意してください。
女性の洋装では、黒無地のワンピースやアンサンブル、スーツが基本的な装い。コーディネートする靴やバッグなど小物も黒い布製のものをお選びください。アクセサリーはつけないのがマナーですが、一連のネックレスなどシンプルなパールならつけても問題ないとされています。

「喪主や親族の服装」についても詳しくご説明しているコラムがあります。あわせてご覧ください。

納棺の方法は宗教・宗派、地域でも異なる

納棺の儀式は仏教以外でも行いますが、内容はそれぞれ異なります。神式では仏式同様に末期の水や湯灌、死化粧を行いますが、死装束には「神衣(かむい)」と呼ばれる白い狩衣(かりぎぬ)や白の小袿(こうちき)を着せます。また、仏教でも浄土真宗は亡くなってすぐに成仏する「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」の考えから、死装束を用いません。
このように宗教や宗派によって納棺の儀式の方法は違います。また、独自の風習がある地域もあるので、菩提寺の僧侶や地域のお葬式事情に詳しい葬儀社のスタッフなどに相談し、事前に確認しておくとトラブルを招きません。

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