お葬式が終わったあとにする、いろいろなこと。
お葬式コラム
迷わず書ける! エンディングノートの書き方。
人生の終わりのための活動である「終活」のひとつとして、「エンディングノート」の作成をすすめられます。エンディングノートは自由につくれる手軽さがある反面、いざ書こうとしたときに、〈どんなノートに何を書けばいいのか迷う〉とおっしゃる方もいます。
今回のコラムではエンディングノートを取り上げ、意味といった基本情報からノートの選び方や書き方など具体的な作成方法までを詳しくご紹介します。
エンディングノートとは。どんなときに役立つの?
「エンディングノート」は、人生の終わりのための活動である「終活」のひとつとして作成されることが多く、「終活ノート」とも呼ばれています。ノートにはご自身の情報や死亡後の希望などを記し、もしものときに残されたご家族・周囲の人へ伝える役割を果たします。
このようにエンディングノートは〈もしも〉に備えるものですが、暮らしのなかのもしもはひとつではありません。エンディングノートが役立つときはいくつもあるのです。
人生最期のとき
ご自身が思い描く最期の迎え方をエンディングノートに書き留めておけば、ご家族など周囲の人に伝えられます。延命治療をするのかなどの終末期医療の方針や介護が必要になったときの意志がわかれば、決断を迫られるご家族は選びやすくなります。
また、人が亡くなると残された人がやるべき事柄はたくさんあります。お葬式スタイルや埋葬方法、相続についての希望を書き残しておくことで残された人の負担は軽減でき、自分らしいお葬式も実現しやすくなるでしょう。
病気やケガで入院したとき
健康な方でも、急な病気やケガで入院してしまう場合があります。家計の管理をしている妻が入院したら、月々の家賃やローンの支払いさえどうすればいいのかわからなくなった…なんてケースもあります。そんなときにもエンディングノートは活躍。預貯金やカードなど身の回りの情報を記載してあるので、必要な支払いなどを周囲の人に頼みやすくなります。
また、病気によって意志を伝えるのがむずかしい状況になったとき、本人が希望する治療法を知ってもらうこともできます。
日常生活でトラブルにあったとき
日常生活で携帯しているサイフやスマートフォンには大切な情報が詰まっており、それらを紛失したらさまざまな手続きが必要になります。しかし、サイフに入っていたクレジットカードのカード番号やスマートフォンに記録していた友人のアドレスなど、すべて記憶できている人はほとんどいないでしょう。
それらを書き留めているエンディングノートがあればスムーズに手続きでき、〈もれがないか?〉という心配も軽減できます。また、設定しているデジタルデータを記載しておけば、パソコンやスマートフォンが壊れたときの復旧にも役立ちます。
このように、日常生活での〈もしものとき〉は年齢に関係なく起こります。シニアに限らず、若い方でもエンディングノートの作成をおすすめします。
エンディングノートとは。どんなときに役立つの?
これなら書ける!? エンディングノートのコツ。
いざ、エンディングノートをつくると意気込んでも、さまざまな情報を集めて記入していくのは大きな手間。めんどうになって、途中で止めてしまう方もいらっしゃるようです。エンディングノート作成への意欲が落ちないコツをお教えしましょう。
ノートに書かなくてもいい。
エンディングノートは専用のノートに書くものだと考えているかもしれませんが、そうではありません。ご自身の情報や希望を残し、周りの人に伝わればいいので、使用するツールはなんでもOK。例えば、ボイスレコーダーで音声を録音したり、動画で撮影したりして残しても問題ないのです。 エンディングノートの選び方は次の章で詳しくご説明するので、参考にしてみてください。
何を書いてもいい。
エンディングノートに決まりごとはなく、なんでも自由に書いてかまいません。書式にも規定がないので、日記のような文章で想いをつづってもいいし、メモ書きのように簡単な情報を並べるだけでもOK。自分以外の人が読んで、内容が伝わればいいのです。 とはいえ、自分の意志を伝えるために書き留めておくといい事柄はいくつかあります。おすすめの項目をまとめて後ほどご紹介します。
書けそうなところから書く。
専用のエンディングノートを手にすると、記入する項目の多さに驚くかもしれません。大小あわせるとかなりの数の情報を書き留めなくてはならず、その作業を前に気が遠くなりそうですが、ご安心ください。エンディングノートに記入する情報は〈書きたいことだけ書く〉という考え方でOK。また、最初のページからはじめる必要もなく、〈書けそうなところから〉〈ひとつだけ〉でも項目を埋めていけばいいのです。むずかしく捉えず、できるところからゆっくり書いていきましょう。
いつ書いても、書き直してもいい。
エンディングノートの作成に適した年齢はありません。つくりたいと思ったときが最適のタイミングです。とはいっても、必要な情報を集めて記入し、自分の希望を整理していく作業は想像以上に時間と労力が必要。早めのスタートをおすすめします。
また、人の気持ちや暮らしの状況は時間とともに変化していくもの。エンディングノートに記入したときから考えが変わったら、どんどん書き換えていきましょう。消せるペンや修正テープを使って上書きしても問題ありません。ただし、あとから見たときに最新の情報がわるよう、〈日付〉の記入だけは忘れずに!
アプリなどデジタルツールもある!エンディングノートの選び方。
エンディングノートは専用ノートを購入して書いていくと思われがちですが、それだけではありません。近年はデジタルツールも登場し、選択肢が広がっています。エンディングノートをつくりたいと思ったら、まずはご自身が記入しやすいタイプのツールの選択からはじめるといいでしょう。
専用のノート
書店や文房具店、ネットショップなどで、さまざまなエンディングノートが販売されています。仕様も多彩で自分史が残せるものや今後のライフプランを書き出せるもの、またデジタルデータとしても残せるCD-ROMがセットされていたり、書類をいっしょに保管できるファイル形式になっていたりするものもあり、好みのタイプを選べます。
専用ノートのメリットは、あらかじめ書くべき内容が設定されていること。各項目を埋めていけばいいので迷わずに書け、さらに書き方のアドバイスや解説が掲載されているものも多いので初心者には安心。また、ご自身の文字で手書きするため、残された人が後から読んで〈その人らしさ〉を感じやすいのも魅力のひとつです。
アプリ
最近は、スマートフォンやタブレット端末で記入できるエンディングノートアプリがぞくぞくとリリースされています。ダウンロードするだけで使える手軽さと、いつでもどこでも手持ちの端末から入力できる便利さがあり、簡単にエンディングノートが書けると人気が高まっているようです。無料のアプリがあるのも、うれしいポイント。
しかしながら、アプリはサービスが終了してしまうリスクをもっています。また、起動時にID/パスワードが必要になるところも多く、いざというときにご家族が見られない恐れもあります。
アプリを使用する場合は使用者のレビューなどをチェックして信頼できるサービスを選び、ご家族にはアプリでエンディングノートを作成している旨を伝えておきましょう。
パソコンソフト
手で書いていくより、キーボードで入力するほうがラクな方もいらっしゃるでしょう。パソコンを使い慣れたデジタル派には、パソコンソフトを活用したエンディングノートが適しています。アプリ同様に有料と無料のソフトがあり、有料のものは冊子として印刷もできるなどサービスが充実しているようです。
また、インターネットには、エンディングノートの「テンプレート」も無料で配布されています。検索エンジンで「エンディングノート テンプレート」と検索すれば数多くヒットし、比較しながら好みのものを探せます。さらに、デジタルだとデータの上書きが簡単で書き換えた日付も残ります。編集しやすいところも大きなメリットです。
手づくり
エンディングノートには決まりごとがないため、ご自身で自由に作成して問題ありません。デザインが気に入ったノートを購入して楽しく書いてもいいですし、便箋などにしたためてご家族への手紙としてご家族にメッセージを届けることも可能。スマートフォンやパソコンを活用し、デジタルデータで残してもいいでしょう。
とはいえ、イチから手づくりする場合は真っ白な状態からはじめます。どんなことを書けばいいのか迷い、遅々として進まないことがあるかもしれません。
エンディングノートを手づくりするときは、書きはじめる前に書き留めたい内容をまとめておきましょう。カテゴリーに分けてリスト化し、項目を埋めていくと書き忘れ防止にもつながります。
エンディングノートの書き方。何を書けばいい?
エンディングノートに決まった書式はなく、基本的に何を書いてもかまいません。とはいっても、自分の意志を伝えるために書き留めておくといい内容はいくつかあるので、おすすめの項目をご紹介します。
自分のこと(基本情報)
ご自身に関するデータをご家族がすべて把握できているわけではありません。また、もしものときは気が動転しているため、思い出せない事柄もあるでしょう。基本的な情報を正確にまとめておくと、誰が見ても理解できるエンディングノートになります。
●名前(ふりがなも)
●生年月日
●現住所
●本籍地
●電話番号(ご自宅・携帯電話)
●メールアドレス
●血液型
●勤務先や所属団体
●健康保険証(記号・番号、保管場所)
●運転免許証(番号、保管場所)
●パスポート(旅券番号、保管場所)
●マイナンバー(個人番号、保管場所)
ご家族や知人のこと
逝去後には近親者だけでなく、遠くに暮らす親族にも連絡する場合があります。また、知らせてほしい友人・知人や、もしものときの緊急連絡先を残しておけば周囲の人はスムーズに連絡できます。
●ご家族(名前、続柄、連絡先)
●連絡してほしい親族(名前、続柄、連絡先)
●連絡してほしい友人・知人(名前、連絡先)
親族や友人・知人でお葬式に参列してほしい人には、その意向も書き加えておきましょう。
●緊急連絡先(名前、続柄、連絡先)
ご自身に何かあったとき、まっさきに連絡してほしい人を書いておきます。
ごペットのこと
ペットを飼っている人は飼育が困難になったときにどうするのかを決め、書き残しておきましょう。
●ペットの基本情報(名前、年齢、血液型、登録番号など)
●かかりつけの動物病院
●加入しているペット保険
●希望する託し先
資産のこと
預貯金などの資産を洗いだすことは、これからのご自身の生き方にも影響を与えます。関係書類を集めて残された人に伝えるべき情報を記入するだけでなく、現状の財政状況を把握して将来のライフプランも考えてみましょう。
●預貯金(金融機関、支店名、口座番号、名義人)
●クレジットカード(契約会社、カード番号、名義人、連絡先)
●年金(基礎年金番号、加入年金の種類、個人年金)
●有価証券など金融資産(金融機関、取引店、口座番号、名義人)
●不動産(所有情報、登記簿謄本など書類の保管場所)
●そのほかの資産(骨董品、貴金属、自動車、ゴルフ会員権など)
●借入金やローン(借入先、返済方法、担保の有無など)
保険のこと
もしものときに備えて保険に加入している人はたくさんいますが、詳しい内容を理解できていない方もいらっしゃいます。エンディングノート作成をきっかけに詳細を確認し、見直してみてもいいかもしれません。
●生命保険・医療保険(保険会社、商品名、契約者、受取人、書類の保管場所)
●自動車など損害保険(保険会社、商品名、契約者、受取人、書類の保管場所)
●そのほか加入している保険(保険会社、商品名、契約者、受取人、書類の保管場所)
契約情報について
現代人は有料・無料のさまざまなサービスを利用しています。本人が亡くなっていても解約しない限り契約が継続されるうえ、有料サービスは会費が自動的に引き落とされる場合もあります。もれがないようリスト化しておきましょう。
●携帯電話(契約会社、サービス名、連絡先)
●インターネット(プロバイダー、サービス名、連絡先)
●電気、ガス、水道(契約会社、契約者名、連絡先)
●SNS(登録サイト、アカウント名)
●動画配信などのサブスクリプション(契約会社、サービス、連絡先)
●ファンクラブなど趣味の会員(加入団体、連絡先)
●クラウドサービス(契約会社、アカウント、連絡先)
健康・医療に関しての情報
ご自身の健康や医療の情報はいざというときに重要。また、終末期医療や介護などの希望を書いておけば望みがかないやすくなります。
●ご自身の健康情報(身長・体重、血液型、持病、アレルギーなど)
●かかりつけ医(病院名、担当医師、連絡先)
●常備薬(おくすり手帳の保管場所も)
●延命治療への希望(受けたい治療、受けたくない治療)
●病名告知の希望
●介護の方針(介護を受けたい場所、介護をしてもらいたい人)
●認知症になったときの希望
●自身で判断できなくなったときに治療方針を決めてほしい人
●医療や介護の費用をどこから用意するか
●臓器提供の希望(提供したい部位など)
●献体の希望(提供したい部位など)
お葬式やお墓の希望
ご自身が亡くなったあとは、ご家族をはじめとした周囲の人にお葬式や埋葬をお願いします。残された人の負担を軽くするだけでなく、自分らしいお葬式を実現するためにも死後の希望は明確に残しておきましょう。
●お葬式(希望するお葬式の形式、喪主、参列してもらいたい人など)
●菩提寺(名称、宗派、連絡先)
●葬儀社(希望する葬儀社、生前予約の有無、互助会の会員など)
●遺影の写真
●副葬品にしてほしいもの
●埋葬方法(希望する埋葬方法・場所など)
●お墓(納骨するお墓の有無、所在地など)
●お葬式やお墓の費用をどこから用意するか
相続や遺言書について
死亡後は、その人が所有していたものを誰かに引き継いでもらわないといけません。〈大切な財産をどう相続してもらうのか〉じっくり考え、その想いがまっとうされるよう遺言書にして残しましょう。
●相続の希望
●遺言書の有無
●遺言書の種類
●遺言書の保管場所
●遺言書作成時の専門家(氏名、連絡先)
残された人へのメッセージ
エンディングノートは残された人への最後の手紙ともいわれています。資産や死後のことといった伝えるべき情報だけでなく、ありのままの気持ちをしたためてみてもいいのです。
●感謝の言葉
●お詫びの言葉
●自分の死後にしてほしいお願い
●次世代に伝えたいレシピ
…など想いを込めて書き残しておけば、残された方々へのステキなメッセージになるのではないでしょうか。
エンディングノートの注意点と保管のポイント。
大切な情報を書くエンディングノートには、気をつけたいポイントがいくつかあります。また、手間をかけて作成しても活用されなければ意味がありません。おすすめの保管場所など保管のポイントもご紹介します。
エンディングノートと遺言書は違う
エンディングノートと遺言書の大きな違いは〈法的な効力があるか・ないか〉。
遺言書は死後に故人が自身の財産の相続の意志を示した書面で、〈どの財産を、誰に、どの割合で〉相続するのかを指定するもの。自筆で書く場合でも書式に決まりがあり、公正証書遺言であれば公証人が必要です。法的な効力をもつため、遺言書の内容に従わせることができます。
対してエンディングノートは、ご自身の情報や望みを書きだすもの。あくまで〈希望〉なので法的な効力はもちません。
暗証番号などは別のノートに書いておく
エンディングノートには資産に関するものなど重要な情報を記載します。同じノートに暗証番号やID/パスワードまで書いておくと盗難などに遭った場合、一気にデータがもれ、大変なことになってしまいます。
暗証番号やID/パスワードは別のノートに書き、保管場所もわけておくのがおすすめ。保管場所のヒントをエンディングノートに書いておけば忘れにくくなります。また、通帳や印鑑、関連書類などの保管場所のヒントも記録しておくといいでしょう。
内容や保管場所を家族と話し合う
エンディングノートには個人的な希望を書いて問題ないのですが、延命治療や介護、お葬式などはご家族にも考えがあります。いざというときにご家族と意見の相違が生まれないよう、まずはご家族と話し合いましょう。エンディングノートの作成は、ご家族とコミュニケーションをとるきっかけになります。
また、話し合いの場を設けることでご家族はエンディングノートの存在を知ります。保存場所も相談し、お互いに把握しておけばいざというときにあわてません。
見つけやすい場所に保管する
エンディングノートには大切な情報を記入しています。そのため金庫などに保管したくなりますが、あまりおすすめできません。エンディングノートは伝えるべき人に届かないと意味がないため、本人しか開けられない場所での保管は適していないのです。
エンディングノートの保管は、いざというときに見つけやすいところ、例えば仏壇や本棚、机の引き出しなど日常生活で目にする場所がおすすめです。保管場所を決めたら、ご家族など信頼できる人に必ず伝えておきましょう。また、ご自身も時間が経つと保管場所を忘れてしまう恐れがあります。保管場所を書いたメモを、サイフやカード入れに忍ばせておくと安心です。